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「金と自由は欲しいけど、何もしたくないーー」を貫いてきたタレントで漫画家の蛭子能収さん(74)。2020年夏に認知症を公表した後も、その“人生哲学”はまったく変わらない。絵を描くよりもテレビの仕事のほうが楽だしギャラもいいと言い続ける蛭子さんに突如湧いた「絵画展プロジェクト」。果たしてプロジェクトは成功するのだろうか……。(第9回/全10回)

 

「蛭子さんの絵は、どこか人を幸せにする魅力があるんですよね」

 

蛭子さんの「最後の絵画展プロジェクト」の第一作となる絵が完成したとき、この日、動画を撮影していたフリーのディレクター・小松隼人さんがぽつりと口にした。

 

〈東京に負けた男〉(仮題)は、「東京で夢破れた」と思い込んでいる蛭子さんが自分の姿を描いたものだ。隣に立つのは、長崎に住んでいたときに勤めていた看板屋の社長だという。

 

東京に打ちのめされた男は「もうだめだ……」と語っている。たしかに悲惨な状況かもしれないが、どこか見る者の心を惹きつけてやまない魅力がある。

 

40年来の盟友・根本敬さんが語る。

 

40年来の盟友・根本敬が語る“認知症になった蛭子さん”の芸術センス
画像を見る 「次はアクリルで描いてみよう」と、蛭子さんの挑戦を後押しする根本さん

 

「無意識過剰の蛭子さんは、人間というよりも、動物的としかいいようのない生き方をしてきたんですよね。自意識や自我が手枷足枷となっている人たちにとって、蛭子さんが、自由に漫画で表現してきた絵や言葉、普段の自然体の発言や指向が心に刺さるんでしょう。認知症になったからこそ、アーティストとして、心に浮かんだものを思い通りに絵にぶつけてほしい。今、蛭子さんは、東京に負けた、負けたと思い込んでいる。それなら、東京に負けた男を徹底的に描き続ければいいんですよ」

 

それにしても根本さんは本気だ。担当記者の私は「蛭子さんの認知症の進行をおさえるために絵を描かせる」程度に考えていた。さらに、その絵が、ほかの認知症の人たちを勇気づけられたらと思っていた。だが、根本さんはこう語る。

 

「リハビリのための絵、では面白くない。“認知症になった蛭子さん”が描いた絵ではなく、あくまでも“芸術家・蛭子能収”として、今の蛭子さんが自由に描いた絵を見てみたい。次はアクリルで書いてもらうのがいいと思います」

 

蛭子さんの絵画展プロジェクトに向けて体制は万全だ。あとは、蛭子さんがやるか、やらないか、だけの問題だ……。

出典元:

WEB女性自身

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