「選曲でセンスが試される」加藤貴子が少女時代に熱中したカセットテープづくり
画像を見る 『涙のリクエスト』で紅白に初出場したチェッカーズ

 

■思い出たっぷりのカセットが、数年前まさかの事態に

 

そして、高校合格のご褒美に買ってもらったのが、ポータブルカセットプレーヤーだ。

 

「まわりの友達が持っていて、すごくうらやましかったんです。街を歩いたり、公園のベンチに座ったりしながら音楽を聴けることが、当時は本当に画期的で。学生服のポケットにウォークマンを入れて、音楽を聴きながら歩いている男子が、それだけでカッコよく見えたりもしました。私は高校まで通う電車の中で音楽が聴きたくて、それでソニーの白いウォークマンを買ってもらったんです」

 

放課後、サッちゃんという仲のいい友達と、それぞれテープを持ち寄り、1台のウォークマンで、片方ずつイヤホンを使って聴いたりしたという。

 

「そのサッちゃんに『こんなアルバムがあるんだよ』と勧められたのが、麗美さんの『“R”』(’84年)。麗美さんは松任谷正隆さんが手がけ、ユーミンも楽曲を提供してデビューした、沖縄出身のアーティストです。私は『My Sanctuary』(’86年)というアルバムの中の『Just Only You』という曲がとくに好きでした。この歌詞にあるような、夕陽がさす放課後の図書室で憧れの男子が読書している姿をそっと眺めるといった、いわば疑似恋愛をしながら、“これが青春だ”なんて満足していましたね(笑)。大好きな音楽をイヤホンで聴いていると、周囲から遮断されて、自分だけの世界に入り込める。それが心地よかったんです」

 

高校時代は、ウォークマンで聴くためのオリジナルテープ作りにも没頭した。

 

「バンドブームだったのでレベッカやBOOWYも入れましたし、『ベストヒットUSA』が人気で、満足に英語がわからないながら、マイケル・ジャクソンやマドンナの曲を集めて作ったりもしました。お気に入りの曲は、間違って上書きしないようにカセット上部のツメを折っておくのですが、どうしてもそのカセットに別の曲を録音したくなったときは、ツメの部分にテープを貼って使いました。いろんなカセットテープが発売されていたけど、私はスケルトンタイプでかわいい色のものが好きでしたね。曲名などを書き込んでカセットケースに入れる『インデックス』も、文房具屋さんによく買いに行っていました」

 

時間をかけて選曲し、入れる順番に悩み、インデックスにまでこだわったオリジナルテープは、大切な宝物だ。しかしーー。

 

「かわいいクッキーの缶に入れて、実家の倉庫に保管しておいたのですが、数年前、親に断捨離されていて……。愕然としました」

 

だが、多感な時期にテープ作りで磨かれた個性は、体にしっかりと刻み込まれているはずだ。

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