■『裸一貫! つづ井さん』つづ井/文藝春秋
アラサーおひとりさまのオタクである、つづ井さんが友人たちと織りなす愉快な日常を濃密に詰め込んだエッセイマンガ。
「どん下がりのときでも、これを読んだ途端もう上がるしかない。老いも若きも面白く読めて元気になれます。爆笑したくだりは『勝負事の決着をみんなで相撲を取って決めてしまう』エピソード。すてきだけど、どこに着ていけばいいのかわからないドレスをまとってみんなで遊んだりも。人生はまだ捨てたもんじゃない。ちょっとしたことで楽しく生きていけるじゃんと開き直ることができます」
■『違国日記』ヤマシタトモコ/祥伝社
小説家の槙生(まきお)は急逝した姉夫婦の一人娘・朝を引き取る。人見知りな槙生と人懐こい朝の2人暮らし。描かれるのは2人がどうしようもなく違う生き物だということ。
「読むたびに勇気をもらえるし、一緒に怒りたくもなるんです」
女友達が、『彼女がいる』と告白したくだりでは、悪気はなくても実は偏見にまみれていたと気づく朝。高校生の朝にとって容赦ない展開だが、誰でも身に覚えのある後ろめたさを真摯に描く信念を感じる。槙生は『朝 あなたが私の息苦しさを理解しないのと同じように私もあなたのさみしさは理解できない。それはあなたとわたしが別の人間だから』と言い切る。優しい嘘はつかない。
「大人として正しいというより、容赦がないけれど、まっすぐだな、と思える。私はこの本に肯定してもらえた気持ちになれました」
■『凪のお暇』コナリミサト/秋田書店
北海道から上京、会社員としてけなげに働く大島凪(なぎ)は、(モラハラ系)恋人・慎二の心ない言葉を耳にし過呼吸に陥る。凪はこれをきっかけに人生を『お暇(いとま)』するべく仕事を辞め、郊外のアパートへ転居。出会った個性あふれる住人や新たな(博愛系)恋人・ゴンとの交流が凪を再生させる!?
「お暇中に新たな気づきを得る凪ですが、最新刊9巻では凪の母にスポットが当たります。閉塞感のある地元で生きる母と、凪の関係性やトラウマも描かれ新たな局面に。実は大本をたどれば母も縛られており、『お母さんもなんとかしなければ』と凪は母にもお暇を出します。そしてこの母視点が読者世代に通じるものがあるのでは。子育てで人生を犠牲にしたと感じていても、その絶望は解放の余地がある。ずっと続くものではないのだと気づかせてくれます。対極ともいえる異なるタイプの男性2人との関係性も目が離せません」
読みだすと止まらない、読み終えると、知らずと心がすっきりしたり、ホッとしている。そんな傑作ぞろい!
【PROFILE】
宇垣美里
TBSに入社し数々の人気番組に出演。現在はフリーアナウンサーとして幅広く活躍