■不安は尽きないけれど、それより行動あるのみ
「いざ『辞めます』って言うまではよかったけれど、『一人になっちゃう』と思うと、急に心細くなったりもするんです……」
心もとない単独行だが、動かなければただ時間だけが過ぎていく。そのほうが、もっと怖いから。
「勢いで朗読会の会場を押さえました。6月16日の代々木上原ムジカーザ、12月2日のルーテル市ヶ谷教会と会場費も振り込んで」
この東京2公演のほかに、全国各地の朗読会参加も考えている。
「自治体やNPO法人などと連携を取って、ご高齢の方などのワークショップ的な参加型イベントにもご一緒したいですね」
3月末日をもって「沖に出た」堀井さんが、翌4月1日、フリーとして最初に向かった現場も古巣のスタジオだった。全力で闘えば、たとえ敗れても、いつだって帰る場所はあるのだ。
収録の冒頭で、もう退職したというのに「TBSアナウンサーの……」と肩書を間違えたのも、じつはスタッフが台本にそう書いて仕掛けた、愛あるトラップだった。
「そうなんだよ、私、引っかかる人生なんだよ。肩書、何にしましょうか。組合員でもないし……」
仕切り直して発した、フリーとしての第一声はーー。
「人間・堀井美香です」
(取材・文:鈴木利宗)