■マッチとのキスシーンで、ファンからの非難が殺到
とにかく、出演者全員が多忙だったという。
「たのきんの3人は映画の撮影と並行して歌番組やバラエティ番組にも出演。マッチはさらに、車の免許を取るために教習所通いまでしていました」
オーディションに落ちたと思っていた武田さんは、肩ぐらいまでに髪を切ってしまっていた。
「それで付け毛でポニーテールにしていたので、マッチから『カツラの久美子』って呼ばれていました(笑)」
人気絶頂のマッチの相手役、しかもキスシーンまであることで、マッチのファンから非難の手紙やカミソリ入りの封筒が殺到した。
「それも“段ボール何箱分”とかではなく“トラック何台分”の量。移動用の車が落書きだらけになっていたこともありました。でも、日本中の女のコが嫉妬するような体験をしているわけだし、しょうがないって、わりと冷静に受け入れていましたね」
こうしてできあがった作品を、あの日『セーラー服と機関銃』を見たような大きなスクリーンで見たときには、特別な思いが胸に広がった。
「自分の顔がバーンってスクリーンいっぱいに映ったとき、鳥肌が立つくらい感動して。この仕事をずっとやっていきたいなって、決意できたんです」
薬師丸ひろ子に間違えられた経験も、生かされているという。
「芸能界に“薬師丸ひろ子”は2人いらない。似ていると言われたからこそ、髪をくるくるパーマにしてみたり、私だけの個性を出そうと試行錯誤しました」
その努力が、いまの“武田久美子”をつくったのだ。
【PROFILE】
武田久美子
’68年、東京都育ち。’82年、映画『ハイティーン・ブギ』のヒロイン役でデビュー。数々の写真集を発売し、グラビアクイーンとして活躍する。現在はアメリカのサンディエゴに在住