■映画のような恋愛を夢見ていましたがゲレンデでの出会いはありませんでした(笑)
一方、大学のキャンパスは都心から離れており、課題にも追われていたため、あまりおしゃれで華やかなキャンパスライフとはいえなかった。だが――。
「1年生の冬、『私をスキーに連れてって』を見てからは、すっかり映画に影響され、しょっちゅうスキーに出かけるように。大学生っぽくなりました」
映画で描かれているような、恋愛にも憧れた。
「ゲレンデでは、めちゃくちゃスキーが上手な人に目がいってしまって、三上さんに似ているか、チェックしてみたり(笑)。映画では、ゲレンデで出会った2人(原田知世と三上博史)が、偶然、同じ職場だったという設定。ありえないとは思いつつ、社会人になると、そんな恋愛が待っているのかもと夢見ることもありました。でも、ゲレンデでの出会いは、残念ながらなかったです(笑)」
映画で原田知世が着ていた白いスキーウエアも、ゲレンデの定番だった。
「スキーを始めたころはボーゲンもやっとだったので、道具へのこだわりもなく、ウエアも含めて全部レンタル。でも、何度もスキー場に通ううちに、買ったほうが安く済むことに気づいて。たしか、御茶ノ水の『ヴィクトリア』にスキー用品を買いに行きました。スキー場では“白い人”ばかりだったから、あえて別の色のウエアを選んだんです」
そして友人の運転する車でスキー場に向かうとき、必ず聴くのは、やはりユーミンだった。
「映画をきっかけに、ユーミンが好きになって、過去の作品もたくさん聴くようになったんですね。ユーミンが、大好きな聖子ちゃんに楽曲提供をしていることを知って“つながっている”と思っていました」
志賀高原、蔵王など、月に何度もスキー旅行を重ねた。大学の友人2人と、バスツアーに参加したときのことだ。
「帰る途中、サービスエリアでトイレ休憩をとったとき、点呼も取らずバスが出発して、私たちは置いてけぼりに……。携帯電話もない時代だし、財布はバスに置いたままで、途方に暮れました」
折からのスキーブームで、同じ旅行会社のバスが、次々にサービスエリアに立ち寄ったため、添乗員に助けを求めた。
「でも、どのバスも満席で……。何台も何台もお願いし続け、ようやく2つだけ空席がある東京行きが来て、乗せてもらうことができました。バス停からの、帰りの電車賃もなかったので、それも旅行会社に出してもらって」
大きな転機は、そんなトラブルの翌年に訪れた。渋谷を歩いていたときに、芸能事務所にスカウトされたのだ。