忌野清志郎さんと大川直人氏 画像を見る

’80〜’90年代の音楽シーンを席巻したアーティストを撮り続けてきた写真家・大川直人氏。開催中の個展「音楽の仕事40年の軌跡 GOOD TIME MUSIC」(8月17日より品川区民ギャラリーで開催。以後、首都圏5カ所へ巡回予定)では、大川氏が「被写体の肖像そのもの」と思える写真が並ぶ。

 

写真は、すべて合成も加工もいっさいなしの「一発撮り」。そんな、“ガチンコ勝負”な撮影の舞台裏について大川氏に聞いた。

 

「休日どころか寝る時間もなく、1日2回点滴を打って仕事をしたこともあります(笑)。’80〜’90年代は音楽業界の成長期で、アーティストもスタッフもパワーがみなぎっていました。なかでも手に汗にぎったのは、安室奈美恵さん。スケジュールがパンパンで、10枚かぎりでの撮影でした」

 

限られた状況のなか、どのようにして相手の心に入り込むのか。

 

「実は、撮影中はあまりしゃべらないんです。褒めたりもしない。会話よりも、“間合い”です。通じ合ってくると、シャッターの間隔がどんどん短くなっていきます。忌野清志郎さんも、寡黙なタイプ。撮影用にイラストをお願いしたときも、黙って筆をとっていました。しかし完成すると、そこには私が。題材の指定はありませんでしたから、とてもうれしいサプライズでしたね」

 

尾崎豊さんの撮影でも、衝撃があったという。

 

「撮影の20日後くらいに亡くなられてしまったんです。当時の尾崎さんは、事務所も替わって心機一転、新たな活動をやっていくぞと意気込まれていたころ。実際、5時間に及ぶ撮影にも意欲的でしたので……大変な驚きでした」

 

大川氏によるポートレートの数々には、まるで“魂”が写っているかのよう。個展の来場者も感じるようで、「1枚の写真の前から、3時間離れない方もいらっしゃいました」とも明かす。ぜひ個展に足を運んで、“あの時代の輝き”を思い出してーー。

 

【PROFILE】

大川直人

’57年生まれ。東京都出身。とある大物女優に言われた「25歳までにフリーになりなさい」の言葉を守り、25歳でフリーカメラマンに。’88年には大川直人写真事務所を設立。音楽関連以外にも、広告、ファッションなど幅広く活躍している

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