「そもそも楽器に触れたことがないのに、ドラムなんてもう、まったく上達せず絶望的でした」
そう話すのは、映画『異動辞令は音楽隊!』(8月26日公開)でドラム演奏に初挑戦した阿部寛(58)。3カ月の猛特訓の末、ドラムの演奏シーンはすべて吹き替えなしで見事に演じ切った。
「演奏シーンはいつも、楽しめた。やっぱり、みんなとセッションするというのがいいんですよ。“誰かが失敗しても、誰かがフォローすればいい”という劇中のセリフがあるように、まさにその経験ができました」
阿部が演じるのは、不本意ながら警察音楽隊に配属された元刑事・成瀬司。彼を通して、社会で自分の立場が失われていくミドルエイジの葛藤が描かれる。
「40代のころは20代や70代の役もやれた。でも50を過ぎたあたりから、やはり30代の役は難しくなり、もちろん20代も。その中で需要がなくなり、一線を退く先輩をたくさん見てきた。先輩は高い壁であってほしい。役へのこだわりにおいて模範であってほしい。僕もそうありたいと願っています」
阿部自身も、本作で自分の新たな可能性を広げる大切さを改めて感じたそう。
「完成した映画を見たとき、成瀬が音楽を好きになる瞬間があまりにもチャーミングで泣けてきた。こんなにも人は変われるのか!? って(笑)。人生100年時代、リタイア年齢なんて、あまり意識しないでいきたい。これまでの人生で得た知識と経験を生かすような発想に切り替えたら、きっと人生の新しいページが開けると思います」