■『101回目のプロポーズ』のストーリー展開に毎回ドキドキ
小田さんはドラマだけでなく、歌の世界でも、恋愛を疑似体験していたという。
「音楽はノリノリの曲よりも、しっとりとしたラブバラードが好きな小学生(笑)。とくに岡村孝子さんが大好きで、歌唱審査で『夢をあきらめないで』(’87年)を歌うため、母と一緒にカラオケに行って練習していました」
こうした家族の後押しもあり、第4回全日本国民的美少女コンテストでグランプリに輝いた。
「その瞬間から生活が一変。毎日のように取材や撮影があったし、歌やウオーキング、演技のレッスンも始まりました。ほぼ毎日のように栃木から新幹線に乗って東京まで移動。学校に通いながらだったので、母とドラマを見る時間も減ってしまいました」
そんななかでも楽しみにしていたのが『101回目のプロポーズ』だ。
「仕事を始めていたので、毎回、欠かさず見ることはできませんでしたが、印象に残っているドラマ。それまでのトレンディドラマとは違って、イケメンとは対照的な武田鉄矢さん演じる主人公が、人気女優の浅野温子さん演じるヒロインにアタックする展開は、毎回、ドキドキしたし、予告を見ては母と次週の展開を予想したり(笑)。“3高”が男性に求められた時代、主人公の男性がプロポーズするシーンは本当に印象に残っています。たいした恋愛経験があったわけではないですが、真摯でまっすぐな気持ちは、人の心を動かすのだなって思いました」
毎回のラストシーンで流れるCHAGE&ASKAの『SAY YES』(’91年)も、大人の恋愛の世界に入り込める曲だったという。
「音楽好きの兄が、おすすめの曲をカセットテープに録音してくれたもののなかに『SAY YES』が入っていて、栃木と東京を往復する新幹線の車中で、毎日のようにくり返し聴いていました」
仕事関係者から、同ドラマの台本を見せてもらったことも、貴重な体験だった。
「いつもブラウン管を通してでしか見ていない世界を、別の角度から見られるようなもの。“憧れの女優の仕事に、ここまで近づくことができたんだ”と、台本を持つ手が震えました」
そんな経験を生かし、小田さんはドラマ『いちご白書』(’93年・テレビ朝日系)で初主演を果たした。
「ドラマでは安室奈美恵さんと共演。物静かなタイプでしたが、内に秘めた強さを感じました。ドラマ収録の合間にダンスのレッスンをしていることがあったのですが、キレがすごくて、体を動かすたびに空気を切る音が。華奢な体なのに、ストイックに練習する姿から、プロ意識を学びました」
こうした刺激を受けられたのも、ドラマのおかげだ。
「『101回目のプロポーズ』をはじめ、さまざまなドラマが夢を与えてくれたし、女優という仕事への興味を駆り立ててくれました。ただ、現実の恋愛に関しては、ドラマの世界に入り込みすぎてしまったせいか、なかなかうまくいかないんですよね(笑)」
【PROFILE】
小田茜
’78年、栃木県生まれ。小学校6年生のときに第4回全日本国民的美少女コンテストでグランプリを受賞し、’91年にはNHK大河ドラマ『太平記』でドラマデビューを飾った。’21年、離婚を機に約12年ぶりの芸能活動を再開。現在はヨガインストラクターとしても活躍している