■ランウェイに見立てモデル気分で歩いた通学路
『ファッション通信』(’85年~・テレビ東京系)は、定期的にスーパーモデルを取り上げていたので必ずチェック。
「WOWOWが開局した当初、シーズンごとにパリコレやミラノコレクションの特集を放送していました。うちは加入していなかったので、お金持ちの友達に頼んでビデオテープに録画してもらい、擦り切れるまで何度もくり返し見ていました」
スーパーモデルたちには、それぞれの魅力があった。
「シンディ・クロフォードはセックスシンボルで、ゴージャスでセクシー。ただモード系の服はうまく着こなせないよう。クラウディア・シファーも、ゴージャス&セクシーの一辺倒。ウオーキングが“のしのし系”で、私はあまり心をつかまれませんでした。一方でナオミ・キャンベルは、いわゆるキャット・ウオークの代表格。筋肉質で野性味があふれ、お尻もきゅっと上がっている。ブランドごとに、歩き方やヘアメークを変えて、まったく違うイメージでランウェイを闊歩。私がいちばん好きなリンダ・エヴァンジェリスタは七変化ぶりがすごい。ヴェルサーチの超セクシードレスも、コム・デ・ギャルソンのような、モード色の強いヘンテコな服もバリバリ着こなしてしまうんです」
スーパーモデルを撮影するカメラマンにも注目し、彼らの作品を掲載した雑誌を学校に持っていくこともあった。
「モード系のドレスには、シースルーで胸が丸出しのようなものもあります。私は“美しい”と思っているのに、高校生男子にとってはエロ本扱い。当時は “わかってないな、こいつら”って思っていました」
学校は自転車通学と徒歩通学が選択できたが、徒歩を選んだ。
「というのも、通学路をランウェイに見立てて、モデル気分で歩きたかったから」
19歳のときに見たドラマ『同窓会』(’93年・日本テレビ系)も忘れられない作品だ。
「西村和彦さんがゲイを演じていて、ドラマの舞台もゲイの街・新宿二丁目。私自身、ちょうど“自分はゲイかもしれない”という意識を持ち始めたタイミングだったので、なかなか人に言えない苦しみに共感。都会に行けば、新宿二丁目のような、自分を受け入れてくれる街があるのだと、明るい未来を感じました」
そんなナジャさんは、大阪の大学に進学し、二十歳のときにゲイバーでのアルバイトを始めた。
「ふだんは男の姿で接客するのですが、クリスマスや周年パーティなどのイベントでは女装。おしゃれな服とメークで変身することには自分自身を表現する楽しさがあったし、憧れのスーパーモデルになりきれる喜びも。でも、いちばん最初に挑戦した女装は、すごいブスやったと思います(笑)」
自分らしく生きるーー。その出発点となる女装のきっかけを与えてくれたのが、スーパーモデルだったのだ。
【PROFILE】
ナジャ・グランディーバ
’74年、兵庫県生まれ。大学在学中にドラァグクイーンに。’11年ごろから関西でのテレビ番組出演が増え、’14年に東京進出。『ゴゴスマ』(TBS系)、『よんチャンTV』(MBS)など多くのワイドショーでコメンテーターとして活躍する。毒舌が苦手な自称「のんびりオネエ」