■社会に出た後の学びこそ知識が深く身につく
若い世代にしてみれば、すでに豊富な社会経験を有する安藤さんから学ぶことも多かったはずだ。
「ですから私は、リカレントとかリスキリングという言葉が出てくるはるか前より、一度、社会に出て、自分が本当に学びたいものは何かを知ってから専門的な学びの場に行くほうが、より身になるんじゃないかというのが持論です」
12年間の大学院生活では、忘れられない光景があるという。
「博士号をいただけることになって、ご指導いただいていた主査の先生が『今日で僕の指導は終わりです』と言われたとき、私、号泣しちゃったんです。仕事との両立は大変で、心が折れそうになるときもありましたが、やっぱり研究室に行けば新しいことを学ぶ喜びがあった。それが終わるんだと思うと、やりきれなくて寂しくて。
本当に、私にとっては、人生の宝物のような時間でしたから。実は、先日、先生にお会いして、『やっぱり、私、研究を続けたいです』と申し上げて、今後もご指導いただけることになりました」
そんななか、昨年10月には、岸田首相が「リスキリングの支援に5年で1兆円」を打ち出したが。
「学ぶことを生産性につなげようとしている傾向が岸田政権にも、世の中全体にもあるように思うんです。一方、本当に学びたいのは陶芸や手芸、絵画かもしれない。でも現状では、『それは趣味でしょ』と言われる。
なんでもいいと思うんです。学びによって一人一人が豊かになることが、社会全体の豊かさにつながる。ですから、まずここで、学びというカテゴライズについて、考え直すべきときだと思います」
【PROFILE】
あんどうゆうこ
’58年11月19日、千葉県生まれ。’87年からキャスターとして活躍し、この4月より椙山女学園大学の客員教授に就任。キャスターもやりながら書いた博士論文を土台として、’22年には『自民党の女性認識「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)を出版