■遺骨は応接間のリビングに置いてある。朝に晩にと語りかけ、前を向く日が始まる
百箇日は「卒哭忌」とも呼ばれ、泣くのをやめて前に進む節目であるとされるーー。
「吉田は父であり、恋人であり、師匠であり、友人であり、そして、私を大女優に育ててくれた最高のパートナーでした。亡くなった当時はぼうぜん自失としていましたが、法要を終え、やることが次々と舞い込むので、前を向かなければと。何十年と習慣にしていたダンスのレッスンも再開しました」
いまの岡田さんにとって忙しさは救い。否応なしに一人で前を向く日が始まっているのだ。
東京と韓国・釜山で吉田監督作品の追悼上映が決まり、いま岡田さんはその準備に追われる。6月17日から「シネマヴェーラ渋谷」で始まる『追悼特集 来るべき吉田喜重』では全22作品が上演され、岡田さんは初日の17日、24日、7月2日の3度舞台挨拶に立つ。
岡田は、応接間のリビングに置かれた遺骨に語りかける。
朝は「おはよう」と語りかけ、帰ると「ただいま」とーー。
「今日はあの『女性自身』のインタビューで、いろんなことを聞かれたわ。本当は無口でおしゃべりの苦手な私が、がんばっていろいろ話したわよーー」
インタビューの終わりがけ、こう語りかけるだろうと笑った。
夫婦でこの世に送り出した作品が世界のどこかで上映されるために、岡田茉莉子は90歳の今日も現役であり続けるーー。