■ポケットの小銭でも、夢さえあれば豊かに暮らせる。終活より今日を楽しく生きなきゃ
「毎日、必ず午前3時半ごろにパッと目が覚めて、『ああ、私はひとりなんだ』って思う。
でも、本棚を見れば、幼いころから大好きな『赤毛のアン』の作者のモンゴメリやフランソワーズ・サガンなどの自伝があって、彼女たちも孤独と共に生きたことを、私は知っている。
それに、もう80年以上生きて、むしろ孤独は自分に味方してくれるぜいたくな時間とも思えるの」
本格的な起床は、6時半。
「まず、テレビをつける。古い小さなテレビで、NHKは映らないんだけど(笑)。毎朝、キャスターがニュースを読み上げていて、こんな早くから偉いねと。
それからお茶やコーヒーを入れて、家庭教師のジェームス先生に、いろんな社会の出来事について教わるの。この“ジェームス先生”というのは、朝夕に届く新聞のことを、勝手にそう呼んでるの」
9時に、仕事開始。
「アシスタントもいませんから、メールも電話も自分で。原稿は、レターパックで送ります。
だから、そんなときに自然に郵便局などに行くための外出があるわけで、いわゆる散歩のための散歩はしません」
12時近くになると、ブランチタイム。
「食事は、ワンプレートで、オムレツにスムージーだったり。玉ねぎが大好きだから、いつもスライスして冷蔵庫に。ものすごく粗食で、少食です。
いただきものも多くて、ビスケットがたくさんあったら、少しずつかじってる。雑食ね(笑)。食でも何でも、きちんとしたシステムには従えないタイプみたい」
その後は、打ち合わせなどがあれば外出もして、17時ごろに仕事を終える。
「日が暮れれば、お酒もほどほどにいただきます。小さなコップに日本酒を八分目。私、カワイイ女の子を描き続けてきたせいかワイン好きと思われているんだけど、実は日本酒党なのよ」
そして19時を過ぎると就寝となるが、こうした毎日のルーティンを支えるのが、健康な体だ。
「新人のころには頑張りすぎたり寝不足で過労にもなりましたが、その後は、ずっと医者知らず。介護保険のサービスどころか、健康診断も最後に受けたのは29歳のとき。これは、丈夫に産んでくれた両親に感謝しかありません」
最後に病院に行ったのは、75歳のときだった。
「車にぶつけられて脳波をとりました。先生がX線写真を見ながら『脳が40歳くらいですね』と言うので、私、つい、『えっ、そんなに老けてるんですか!?』って言っちゃった。そしたら先生が『普通、75の人に40歳と言うと喜ぶものですよ』ですって」
そりゃそうよね、と笑う口元から白い歯がのぞく。そういえば、件のエッセイにも「全部自分の歯なの」とあったが。
「ベランダで育てているアロエで作る“アロエ水”でうがいしてるのが、いいのかな。人によって体質も違うんだから、自分が信じる健康法が、いちばん体にいいのよ。
今のマイブームがコーヒー健康法。飲むんじゃなくて、頭にピチャピチャふりかける。香ばしさがアロマ効果になるし、前頭葉の刺激にもなるって、ほんとかな(笑)」