86歳、カワイイぼっちでハッピー!オッケー! イラストレーター・田村セツコさん
画像を見る 厳格な父と器用な母。「ぜいたくは敵」の時代にミシンで素敵な洋服を手作りした母はアーティスト・田村さんのルーツ

 

近年、よく話題になる「終活」や「年金」についても尋ねた。

 

「8つ年下の弟と電話で話すと、その話題になります。この先、大事なことと思いますが、正直、まだピンとこない。

 

年金も、郵便局の通帳に振り込まれますが本当に少ない額で、その内訳などもよくわかってないの。ただ私は、千円札1枚あれば大丈夫。ポケットの小銭でも、夢さえあれば、豊かに暮らせると思うんです」

 

さらに年齢とともに増す、認知症への不安についても、

 

「それも実は自然なことで、私は人が“うららか”になると受け止めています。

 

たしかに、今まで『難しいことは明日考えよう』できたけど、そろそろ真剣に考えなきゃと思いますから、明日考えます(笑)。

 

ただ、『お葬式はしません』とは、周囲の人に伝えておかなきゃね。『田村セツコ孤独死』もかまわない。お別れパーティも、来る人が面倒くさいじゃない。それは申し訳ないと思うの。

 

そんな心配より、今日を楽しく生きなきゃ。それでいつかは、お墓の中から『ボンジュール!』って、私らしいと思わない?」

 

あっけらかんと言える背景には、好きな仕事を選び、今もバリバリ現役で描き続ける日常がある。

 

結婚もしなかった。憧れはありましたよ。人並みに、そんな恋愛話でにぎやかな時期もありましたし(笑)。でも、ギリギリの決心のなかで、私には仕事と家庭の両立は難しいかなと思ったの。

 

自分が6人家族の幸福な生活を十分に楽しんだから、同じことはしなくていいかな、という思いもあったかな。それで今、屋根裏部屋のような自宅マンションで、貧乏絵描きのひとり暮らしをしながら、好きな絵を描いてます」

 

日々、ペンを走らせながら、絵に込めた思いを届けたい相手が明確に存在する。

 

「この空の下のどこかに、今日もひとりぼっちでため息をついている女の子や女性がいるでしょう。彼女たちに、『オッケー、オッケー、だいじょうぶだから!』と、そうつぶやきながら、いつも描いています。

 

自分の人生を振り返ってもそうだったけど、世間には必ず素敵な先生や応援団がいるもの。まず私がその第1号だからねと、そんな思いを大切にしているの」

 

【後編】86歳現役のイラストレーター・田村セツコさんが語る「母と妹のW老老介護」へ続く

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