86歳現役のイラストレーター・田村セツコさんが語る「母と妹のW老老介護」
画像を見る 「自慢の娘たち」という絵日記講座の生徒さんと。刺激と感動に包まれながら田村さんの愉快なひとり暮らしは続く(撮影:高野広美)

 

■女性ひとりでも元気に生きられるヒントが“セッちゃん”の日常のなかにあふれて

 

「この店は、私の“ご近所さん”のひとつで、お付き合いはもう30年近く。

 

母や妹の介護をしていたときには、当時飼ってた猫を預かってもらったこともありました。ここでインタビューを受けたり、片隅の小机で仕事をすることも」

 

原宿のビル地下にある「シーモアグラス」。

 

絵本やアートに出合える喫茶店として知られ、店内には田村さんの作品も飾られている。女性店主が語る。

 

「うちのお客さまのなかには、子供のころからのセッちゃんのファンという方もいらして、ここでバッタリということも。すると、なかには感激で突然涙する人もいて。セッちゃんは、いつも必ず相手の手を握りながら『がんばってね!』と声をかけている。誰にも分け隔てない姿は、ずっと変わりません」

 

シーモアグラスを出ると、田村さんは、「もうひとりのご近所さんにも会っていって」と言う。マンションの同じフロアに住む森山順子さん(77)宅にお邪魔した。

 

「うちのテレビはNHKが映らないって言ったでしょ。昨夜も、ここの大画面テレビで、クラシックコンサートを見せてもらったの。私と順子さん、あと数軒先に50代の気のいい男性がいて、3人でよく集まってます」

 

田村さんが言えば、森山さんも、

 

「お仕事のときもふだんも変わらない、フランクな“セツコさん”。大都会のマンションで、ひとり暮らし同士が、まるで昭和のようなご近所付き合いができるのも、彼女の人柄のおかげだと思います」

 

その間も田村さん、見たかった番組が録画されているはずと、テレビを操作していたが。

 

「ねえ、リモコンの使い方がわからないのだけど!」

 

女性がひとりでも元気に、ハッピーに生きていくヒントが、“セッちゃん”“セツコさん”とみんなから気安く呼びかけられる田村さんの日常のなかにあふれていた。

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