■「凄まじかったですね」審査員に初めて抜擢されて体験したバッシング
“頭で考える審査”については「つまんないよね」と評し、『M-1』の決勝戦に進出している芸人はすでにプロであることを指摘する。
「時間制限があるのは好きだけど、ネタのことは売れてる人に対して言うことないんだよね。私だって同業者だからネタを見て、『間違えたんだろうな』とか『そのオチじゃない方がよかったな』と思うことはあります。だけど、その人たちはもうプロの売れてる人たちなんで。
例えば、 新人賞決定戦とかオーディションだったら、『立ち位置がおかしい』とか『前フリが長すぎる』とか技術的なことは言うかもしれません。そういう細かいことも当たり前のようにいっぱいあるんだけど、『M-1』の決勝戦はそういうレベルじゃないので。ただただもう、“ゲラゲラ笑わせてくれる人が優勝”って思ってるんですね」
短時間でジャッジを求められる審査員だが、今大会では海原のヤーレンズに対する審査内容に賛否が巻き起こったことも。クセの強い“おにぎり屋さん”のネタに対して、94点をつけた海原は「もっとしょうもないものが見たかった」とコメント。しかしその後に言葉を詰まらせていたため、ネットやSNSで“審査員なら言語化して”“ヤーレンズに失礼”といった批判を浴びてしまったのだ。
若林も『あちこちオードリー 新春ノーカットSP』で「発表から終わって3日間叩かれるまでが仕事」と語っていたように、審査員を務めるには“覚悟”が必要とされている。審査員も審査されてしまう時代だが、山田は初めて審査員に抜擢された当時をこう振り返る。
「凄まじかったですね、本当に『死ね』とかね。まず『誰なんだ』『このド素人』といった反応が寄せられて。でも多分、真剣に『M-1』を見ているからなんでしょうね。私のことを知らなきゃ、知らないんだからね。だから『ごめんなさいね、山田邦子と申します』とかね、SNSでも返信してたんだけど。
そしたら今度は逆に私のファンが、『山田邦子を知らないでお笑い番組を語るんじゃねぇ』って怒っちゃって。それで、『言い合ったりすることも全部含めてこういう番組なんだな』って思ったんで、別に気持ちが落ち込むとかガッカリするということはなく、『もっとやれ!』って思いましたよ」
山田は“海原が言いたかったことは理解できる”として、こう語る。
「多分、ヤーレンズに期待してたんでしょうね。もうちょっとゲラゲラ笑いたかったんでしょうね。私もヤーレンズが大好きなんで期待してましたが、ネタの後半で『もっといけ!』って感じましたからね。
でも、そういうものだよね。“審査員として番組に出た意味=炎上”と捉えるのはちょっと嫌だけど、『あの人いたか?』『なに言ってた?』って言われるよりは、注目された方がいいよ。ともこちゃんは年間で何回も板の上に立つ人だから、“板の上の呼吸”というようなことが言いたかったのでしょう。いいんじゃないですか、それも一つの意見ですよ。審査員として目立つことができて、ちゃんと仕事をしたんじゃないですか」
バッシングも経験した山田からのエールは、今後、選ばれる審査員たちの励ましになることだろう。
