「ジジイども、見たか!」桂二葉 “女にはできひん”の声跳ね除け、塗り変えた落語の歴史《『情熱大陸』出演が話題》
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■何度も頼み込み米二師匠の初の女性の弟子に。“女だから”の苦労は常につきまとった

 

大学卒業後、いったんはスーパーに就職した。しかしやはり、寄席に通ううちに、桂米二(よねじ・64)という落語家の弟子になりたいと考えるように。

 

「うちの師匠は地味なんですけど。でも、高座はとても自然で、無理してるところが一つもない、そういう落語家で。なんとなく面倒見もよさそうに見えたんですよね」

 

まずはアピールやと、彼の目に留まるための行動に出た。

 

「師匠が出演してた繁昌亭に1週間、毎日通って同じ席に。そんとき私、アフロやったんで、めっちゃ目立ってたと思います。『ここにおるでー』って感じで(笑)」

 

作戦は大成功だったようだ。米二さんが述懐する。

 

「珍しい髪形のコがおるな、と目にはついてましたよ。それが、3日も続けて客席に。『これは、ただごとやないな』と思っておったらもう、すぐに『弟子にしてください』と言うてきて……」

 

返事は「女のコはとってへんねん」と、にべもないものだった。米二さんは次のように補足した。

 

「うちの師匠(3代目桂米朝)の持論ですね、『落語は男が男を演じ、男が女を演じるようにできてる芸や』と。つまり、歌舞伎と一緒です。だから『女が落語をするいうんは、宝塚版がいるわけや。わしはそんなんはよう教えん』と。その点は私も同意見。女性に教えるつもりなんて、サラサラなかった」

 

それでも二葉さんは諦めない。何度も足を運んでは頭を下げた。やがて根負けした米二さん、「話だけでも聞こか」とあいなった。そこで、彼女が鶴瓶さんの追っかけファンだったことも知った。

 

「鶴瓶兄さんにすぐ電話しましたよ。『こんなコが来て困ってますねん、どないしたら?』と。そしたら兄さん、『弟子にしたりいな〜』と、わりと無責任に言われて。でも、私自身もなんとなくね、むげに断ったら、あとで後悔するような、そんな気がしてたんは確かです」

 

「ほな一回、稽古つけよか」と口を滑らせた師匠。その言葉に「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズを決めたまではよかったが。

 

「三遍稽古、言うんですけど。一つの演目を何個にも区切って、私の目の前で師匠がやってくれはるのを3回だけ見て聴いて、覚えるっていう。『こんにちは』『おー、ま、こっち上がりいな』……という感じで、だいたい1分ぐらいずつ、教わるんですけど。私、『こんにちは』だけしか、覚えられなくて。『お前、そんだけしか覚えられへんって、どういうことや!』と怒られました。仕方なしに4回目も実演してくれはったんですけど……そんでも、『こんにちは』『おー、ま、こっち上がりいな』までしか覚えられへん、みたいな。もう、そんなんの連続で、15分の前座ネタ覚えるのに半年かかりました」

 

米二さんも呆れ顔で振り返る。

 

「落語はたくさん聴いてきてたはずやのに、基本的な約束事、“上手、下手”のこともようわかってない。対面で稽古つけるとき、師匠が上手向いたら弟子も当然、自分の上手を向かなあかんのに、あいつは鏡と同じ要領で逆を向く。仕方なしに隣に座って『ええか、あっこに甚兵衛さんがいてると思え』と指さしながら教えましたよ」

 

こらあかんな……とサジを投げかけた米二さんだったが。

 

「何日かたってまた来たので、覚えたとこをやらせてみると……、これが、なかなかよかったんです。なぜか面白いと、そう思えた」

 

芸人独特のなんとも説明のつかぬおかしみのことを、落語の世界では「ふらがある」と評する。まさに米二さんは目の前のズブの素人に、ふらを感じ取っていた。

 

「ほんで、押し切られる形で『弟子にとろか』と。それが、忘れもしません、11年の3月9日です。東日本大震災の2日前。以前の阪神・淡路大震災のとき、私も仕事なくなりましたから。もし、震災が先やったら、弟子にとってなかったでしょうね。自分のことで手いっぱいやと。でも、震災直前に弟子に。そんなところも、なんか二葉は持ってたんかもしれませんね」

 

こうして二葉さんは24歳で、米二師匠初めての女性の弟子に。

 

勇んで入った落語界だが、女性ならではの苦労も多かった。高座では客からの冷たい視線にさらされた。出番直前、舞台袖で先輩から撞木でお尻を突かれるなんてセクハラは日常茶飯事。さらに、

 

「女に落語はできひん、高座返しだけしとけ!」

 

ある業界の人間からぶつけられた言葉。振り返る二葉さんの表情には、いまも怒りが滲んで見えた。

 

「高座返しというのは前座の仕事で、舞台のお座布団ひっくり返して次の演者さんのための準備をするもの。男性の前座落語家もするんですけど。私は『前掛け、してやれ』とも言われて。『男の人は、してませんやんか!』と反論すると『女は前掛けがしきたりや』と」

 

上方落語の寄席では、高座返しなど裏方仕事を専門とする“お茶子”と呼ばれる女性がいる。

 

「彼女らは前掛けをしてるんです。でも、当然ですが『私はお茶子と違う、落語家や!』と。ただ、そんときはけんかしてる時間もなく、しゃあなしに前掛けつけて高座返しして。袖に戻った瞬間、パッと外して、投げ捨ててやりました」

 

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出典元:

WEB女性自身

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