「直系の家は意外に少ない」「すり足だけで3カ月」大ヒット映画『国宝』歌舞伎指導の中村鴈治郎明かす「10の秘密」
画像を見る 製作の最重要キーパーソン・中村鴈治郎さんが驚きのエピソードを惜しげもなく明かしてくれた(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会 全国にて上映中

 

■疲れて姿勢が悪くなるたび「肩甲骨!」と声をかけ

 

【トリビア2】吉沢亮と横浜流星は1年以上日本舞踊の稽古を重ねた

 

観客が口を揃えるのは、吉沢と流星の女形の所作の素晴らしさだ。

 

「俳優が歌舞伎役者を演じるには、日本舞踊をたたきこまなければいけないと、舞踊家の谷口裕和さんに舞踊指導をお願いしました」

 

吉沢も「稽古はすり足、歩き方から座り方、立ち方、扇子の置き方拾い方、本当に初歩の初歩の、すり足だけで2~3カ月」と、初日の舞台挨拶で語っている。

 

【トリビア3】鴈治郎さんが説いた“背中を美しく見せる秘訣”

 

「指導というと演目についてのことだと思われますが、僕は歌舞伎役者の楽屋での過ごし方や、舞台の小道具、客席の雰囲気、日常も含めて、歌舞伎をご存じの方にも違和感なく見えるように、歌舞伎のシーン全般にも責任を持ちました。

 

女形を演じる2人には、とにかく、肩甲骨を寄せて背すじをまっすぐに保ち『背中をきれいに見せなさい』と伝えました。でも疲れてくると、2人とも首が前に出てしまい、姿勢が悪くなってしまう。そのたびに『肩甲骨!』と声をかけました」

 

■『藤娘』『二人道成寺』などを艶っぽく舞う美しさもそのたまもの!

 

【トリビア4】化粧の“赤いタッチ”のひと手間で美しさを際立たせて

 

「歌舞伎界では、子どものころは、人に化粧をしてもらいますが、絵心が生まれて大人になると自分でメークをします。自分の顔のことは自分がいちばんわかりますし、メークの仕方は、役者それぞれ違います。映画で亮が赤いタッチを入れるのは私流で、鼻すじを立て、より美しくなるようにしています」

 

【トリビア5】歌舞伎界でも直系がつながっている家は少ない

 

御曹司の俊介と部屋子の喜久雄。その後継問題を軸にストーリーが展開していくが――。

 

「歌舞伎の世界は世襲、世襲とよくいわれます。うちは直系四代目ですが、意外と直系で受け継いでいる家は少ないです。芸養子という言葉があるんですよ」

 

芸養子とは、素人の子弟でも才能や見込みがあれば、歌舞伎の家の芸を継ぐこと。

 

「世襲にせよ、芸養子にせよ、名跡を襲名した後でも、お役をいただけないこともある厳しい世界です」

 

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