■ホラーブームを陰から支える“考察ブーム”の存在
ホラーの楽しみ方の一つとして、散りばめられた謎を考察しながら楽しんでいる人も多い。実際、大森が手掛ける『TXQ FICTION』シリーズでも、ブログ上で自身の考察を発表している人も少なくない。果たして、大森は作り手として考察をどのように捉えているのだろうか。
「考察自体がバイラルしていって番組を盛り上げていただいている面もありますし、そういう楽しみ方を否定するつもりは全くありません。ただ、僕は考察の楽しみ方がわかっていないからか、あまりそこに興味がないんです。作り手が考察に頼りすぎることは、陰謀論を広めるメソッドと近しいように感じています」
近年はSNS上などでも「陰謀論」が至る所で浸透している。フェイクドキュメンタリー作品でありながら、『TXQ FICTION』とあえて番組名で“フィクション”と謳っているが、そこには大森の作り手としての“矜持”があるようだ。
「本当は繋がってない2つのピースを、恣意的に結びつけて、そこに物語性を見出すことが陰謀論だと思っています。その行為は確かにすごく面白かったりするんですけど、僕がとにかく“フィクションを作りたい”とすごく思っているのは、そこに対抗したいって気持ちがあって。
ネットで見る情報も、一つ一つそれが陰謀論なのか真実なのかを精査しようもなくなっている段階で、完全なポストトゥルースの時代になっているなと。真実と虚構が全く見分けがつかなくなっている世の中で、真実かフィクションかわからないコンテンツに対して、『面白いんだっけ』という気持ちがあります。やっぱりフィクションとしての物語を作るっていうのが、いちばん僕は面白いと思いますし、それが陰謀論に唯一対抗できることなのかなと思っています」
