《知られざる結婚生活33年》柳沢慎吾「妻の誕生日には毎年、赤いバラ50輪」1週間口を聞かない夫婦ゲンカも
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■「彼女は自分の両親にも結婚相手を伝えていなかった」

 

’91年初夏のデート帰り、国道246号の路肩に車を止め、プロポーズをした。

 

柳沢:一緒になろう。もう、あばよと言わすなよ。
彼女:うん。

 

婚約が成立した瞬間、外から怒号が飛んだ。

 

「『品川ナンバー、移動してください。駐車禁止ですよ、運転手さん』と自動車警ら隊がマイクで叫ぶのよ。♪ブーンブンブンって逃げるように去っていったね(笑)」

 

両親の家にあいさつに赴くと、柳沢は驚愕した。

 

「お父さんとお母さんが僕の顔を見た瞬間、『……えぇ!?』って。両親にも、交際を伝えてなかった。本当に口が堅いんです」

 

専業主婦に転身した妻の支えを受け、柳沢の勢いはさらに増していく。’94年、ドラマ『オレたちは風』(北海道テレビ)に主演。ある日、突然降り出した雨のため、ロケバスで木根尚登と待機していた。

 

「『警察24時』の話をしていたら、木根さんが『タバコのパッケージを使ってしゃべると無線の音に聞こえますよね』と教えてくれたんです。早速、その夜の宴会で試したら、スタッフに大ウケした。木根さんがいなければ、あのネタは生まれなかったですね」

 

「ひとり警察24時」「ひとり甲子園」は柳沢の代表作となり、テレビでの披露を頻繁に求められた。

 

「何度もやるから、飽きてきた。もうやめようと思いました。でも、不思議とそのころ、世間に浸透し始めたんです。松方さんに相談したら、『やめるのは簡単だぞ。続けることが大事なんだよ』と」

 

定番の「あばよ!」も、違う言葉にしようと模索した。

 

「ちょうど、信州の方からお手紙をもらいました。『私たちの地域では別れの挨拶は“あばさ!”と言います。ぜひ使ってください』って」

 

柳沢は早速、『なるほど!ザ・ワールド』(フジテレビ系)の収録で新フレーズを披露した。

 

「おまらに首ったけさ。あばさ!」

 

会場は沈黙に包まれた。

 

「シーンとしたの(笑)。『は? 何言っちゃってんの?』みたいな空気でしたよ。やっぱり、『あばよ!』なんだろうなって」

 

百発百中に見える柳沢も、試行錯誤を繰り返してきた。それは今も変わらない。定番ネタの芯は変えないものの、改良し続けている。「ひとり警察24時」で無線の音を再現する際、本物により近いソフトパッケージの音を求め、現在はオリジナルの箱を使用。「ひとり甲子園」では試合中、審判のベルトが外れたシーンを追加するなど時事要素も盛り込んでいる。

 

「最近、『あばよ!』と言っても、『あのセリフが聞けた』という反応で笑いにつながりづらいんです。だから、『あばよ……ゲッツ!』とダンディ坂野さんのネタを加えています。これが意外にウケるのよ」

 

40年以上交流の続く中島唱子は、柳沢の人気の秘訣をこう分析する。

 

「柳沢先生はすごく運を引き寄せる人なんです。それは、すごく気遣いのできる常識人だからですよ」

 

数年前、柳沢出演のドラマで、真冬に夏のシーンを撮影していた。機材セットの待ち時間に、俳優陣にはすぐ上着や暖のとれる場所が用意されたが、エキストラはそのまま野外で待機していた。それを見た柳沢はスタッフに「みんなに用意しないとダメじゃないか」と強い口調で注意した。

 

「普通そこは見えなくなっちゃうんですよ。同じ現場にいる人たちの隅々まで見えていて誰に対しても誠実で温かい。彼の人間性ですね。今もスタッフ、キャスト全員に気を配れるし、人の痛みがわかる。だから、柳沢先生は魅力的で人に好かれるんです」

 

中島には、6年前の出来事が脳裏に刻まれている。

 

「私が『最後の舞台になるかもしれないから見に来てほしい』と電話したら、『もちろん行くよ』って」

 

だが、収容人数の少ない劇場なのに、7割も埋まりそうにない。本番の数日前、中島は「無理しないでいいよ」と伝えた。すると、柳沢は真剣な口調になった。

 

「何言ってんだよ、唱子。晴れ舞台なんだから、誰も入ってなくても行くよ」

 

当日、劇場に訪れた柳沢は、楽屋に花とバウムクーヘンを届け、終演後に唱子やスタッフに焼き肉をごちそうした。数日後、中島に電話した。

 

「唱子の舞台、すごく感動した。冒頭で、長ゼリフを完璧に言ったでしょ。俺も負けちゃいられないと思った。この前、何十行もセリフがあるCMの依頼があった。受けるか迷ったけど、挑戦するよ」

 

中島は涙をこらえた。

 

「私が大変なときに寄り添ってくれた。昔からずっと優しいんです。本当に柳沢先生は変わらない。『CMの依頼があった』と必ず自慢を入れてくるところも(笑)」

 

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