ラスベガス、シーザーパレスホテル内に建設されたセリーヌ専用の劇場において約5年間に渡り繰り広げられた話題のショーが、昨年暮れに幕を閉じ、さあ!いよいよワールドツアーへと飛び出したセリーヌ。9年ぶりの来日公演。一体どんなショーを観せてくれるのか! その目撃者となるべく、今宵東京ドームに集まった観客数5万人。2階スタンド席までぎっしりと入っている。誰もがセリーヌの登場を心待ちにしながらその時が来るのを待っていた。
午後6時15分、会場内が暗転。東京ドームのグラウンド中央にセットされたステージの真上から、360度客席を囲むように設置された4台の巨大スクリーンに、セリーヌのPVが映しだされるとドームに歓声が渦巻いた。次の瞬間(一体どこからか?)ステージ中央にセリーヌが登場。「ゲンキデスカ? トーキョー」と第一声を発した。黒のベアトップとミニスカートがつながったセクシーなドレスに、クルっとカールされたゴージャズなブロンドヘアをなびかせ、まるでバービー人形のようなセリーヌがそこにたっていた。
0803111 『Drove all night』でセリーヌは両手を広げて観客を煽ると、5万人全員が一斉に右へ左へ両手を振りあげセリーヌに応える。360度を観客に取り囲まれたステージでは、さぞやセリーヌあっちへ、こっちへと動き回って大忙し?と思いきや、このセットには動く歩道や回転ステージなどが巧みに取り入れられていて、「セリーヌが近くに感じられる」と大好評だ。
「コンバンワ! 楽しんでいる? 日本に戻ってこられて嬉しいわ! ジャイアンツのホームグラウンドで一緒にみなさんと過ごせて幸せ」と挨拶すると、ドームの1塁側2階スタンド上方にある“セコム”の看板の長嶋さんが一瞬、微笑んだようにみえた(笑)。
ラスベガスのショーとはまた違うダンサーたちの振り付けと幻想的な映像がセリーヌの歌声に華を添える。『To love you more』では、当初(今回のステージで共演するのでは?)と噂のあった世界的に有名なバイオリニスト、かつてセリーヌと一緒にワールドツアーへも参加したことのある葉加瀬太郎や、また古澤巌ではなく、金髪のイケメンバイオリニストが登場。セリーヌの隣でやさしい音を奏でていた。
ここでセリーヌ1回目の衣装チェンジ(このあと4回衣装チェンジ)。白いブラウスに赤いパンツ、腰には赤いドレープを巻いて登場。そのドレープを男性ダンサーが素早く取り去ると、そのまままるで闘牛士のごとく動きまわり、その姿はまるでここがスペインかどこかラテンの街のようだ。情熱的なダンスと衣装でアルバム『Taking Chances』から『Eyes on me』を歌う。
続いて腕に着けていた黒の長いアームカヴァーを外しながらしっとりと歌うのは、映画『ブリジット・ジョーンズの日記』の中でレニー・ゼルウィガーが歌ったおなじみの『All by myself』。サビのもっとも高い部分でバンドが演奏を止め、咳き払いひとつ聞こえない、静まり返った5万人の観客を前にセリーヌの天使のような歌声だけが響き渡る。ここにいるすべてのひとの心がセリ―ヌに奪われた瞬間だった。
0803112つい先日、成田空港の到着ロビーに、レネ・チャールズ君7歳の手をひいてあらわれたママの顔セリーヌと、今この東京ドームのステージにたって、5万人10万個の瞳に見つめられている歌姫の顔セリーヌが同一人物だなんて信じられない。家庭と仕事、二つの顔を持ちたくましく生きている姿が多くの女性に指示され、観客の中にはキャリアウーマンらしき女性の姿も多くみられた。ライブ中盤、ここからロックチューンが続くと、バンドもコーラス隊もステージに上がり場を盛り上げる。ラメ入り、スパンコールの煌びやかなミニのワンピースに着替えたセリーヌが巨大スクリーンにニッコリ笑って映しだされると会場内のあちらこちらから「可愛い~」との声がもれ聞こえた。17曲目の『Alone』はニューアルバム『Taking Chances』の2曲目に収録された同郷カナダ出身のバンド“ハート”の大ヒットバラードをカバーしたもの。ボーカル、アン・ウィルソンのハイトーンボイスがとても印象的なこの曲も、星が降るスクリーンをバックにセリーヌはパワフルに歌いあげた。「本当に素晴らしいオーディエンスだわ! もっと日本語を話せたり歌えたり出来たらいいのに。昔少し覚えた日本語の歌をちょっと歌ってみるわ」そういって♪ワタシハシアワセ~愛二ツツマレル~♪と歌いだすと、前に座っていた年配のカップルは嬉しそうにセリーヌの歌声に合わせてリズムをとったり手を叩いたりして喜んでいた。セリーヌの母国語はご存知の通り、出身地カナダケベック州で話されているフランス語。英語は2ヶ月間ベルリッツで猛特訓を受けて習得したものだとか。その母国語であるフランス語で一曲『Pour que tu m’ainmes encore』を披露。「気に入ってくれてありがとう。メルシーボク―」。
0803113コンサートも終盤。とここでサプライズゲストの登場。「少し前だけど、若くて美しい日本人のアーティストとレコーディングしたの。ミス、イト・ユナ!」そう言って紹介され登場したのは、『あなたがいる限り~A world to believe in~』でセリーヌとコラボレートしている伊藤由奈。「緊張して心臓がドキドキしています」という由奈に対してセリーヌは「昨日のように、私はただサポートするだけよ。なぜならあなたは素晴らしいタレントの持ち主だから」と。二人の息はとってもぴったりだ。
20曲目はなんとQueenの名曲『We will rock you』。知らなかった! セリーヌがこんなにもフレディー・マーキュリーを敬愛していたなんて。ダンサーと一緒に「Come on! everybody!」と観客を煽り、フレディーの映像が映しだされるなか、力強く拳を掲げて歌う姿がなんともかっこいい!
セリーヌはたくさんの引出しを持っている人だ。いろいろなアーティストと共演し、デルタ・グッドレムのような若い才能から曲の提供を受け、同郷のバンドの歌をうたい、ロックでもソウルでもどんなジャンルの音楽をもセリーヌ色に染め、歌いあげてしまう。音楽に対して柔軟性を持った人だ。
ミニのワンピースからすらりとのびた長い脚にハイヒールを履いて、すでにここまで20曲以上も歌いつづけているのに、セリーヌはまったく疲れた様子を感じさせない。涼しげで、自信いっぱいに歌う。さすがラスベガスで年間160公演以上もショーをこなしてきたプロのエンターテイナーだ。25曲目の『Love can move mountain』ではステージ上に設置された小さな台が高く上がり、その上でセリーヌはクルクルとマイクスタンドをバトントワリングのように回転させ、それに合わせて踊るダンサーたちの勢いもまったく止まる様子がない。そして最後、アンコールは映画『タイタニック・・・』と前置きする必要もすでにないほど、セリーヌの名曲中の名曲となっている『My heart will go on』。淡いイエローのドレスに身を包んだセリ―ヌが熱唱し、5万人の観客の鳥肌を立たせたまま2時間のショーは幕を閉じた。
セリ―ヌはライブDVD『A New Day』の中でも、また空港に集まったファンに対しても、誰にも分け隔てることなく心の底から抱擁を交わす。その姿はまるでマザーテレサのようだといったらセリーヌはどう思うだろうか? セリーヌはステージを降りると、花道を囲むたくさんのファンの興奮を一人一人鎮めるかのように、抱擁し、握手し、やさしく触れながら消えていった。

[撮影:中嶋英雄]
セリーヌ・ディオン@東京ドーム 9th Mar.2008

ROCK
1.Open video
2.Drove all night
3.I got the music in me
4.Power of Love
5.Taking Chances
6.It’s all coming back to me
7,Because you loved me
8.To love you more
PASSION
9.Musical Spanish segue
10.Eyes on me
11.All by my self
FASHIONISTA
12.Musical intro
13.I’m alive
14.Shadow of love
15.Just fade away
16.I’m your angel
17.Alone
18.Pour que tu m’aimes encore
19.A world to believe in
20.We will rock you
21,Show must go on
SOUL
22.Band jams-I’ve got the feelings
23.It’s a man’s world
24.That’s just the woman in me
25.Love can move mountain
26,River deep mountain high
FINALE
27.My heart will go on