一国の政府が、1人のアーティストのボイコットを先導する――これも“自由の国”アメリカだからこそ、なのだろうか。
騒動のきっかけはラッパーT.I.が13日朝にTwitterで公開した新曲のMVだった。アメリカ合衆国大統領の象徴とも言えるオーバルオフィス(大統領執務室)を模したセットで、「REALLY I DON’T CARE. DO U?」と背中にプリントされたコートを着た女性が、デスクに座るT.I.に見せつけるようにストリップを躍るというものだ。
このコートは今年6月、ファーストレディのメラニア夫人が、不法入国した親から引き離された子どもたちが収容されているメキシコ国境近くの施設を視察に訪れた際に着ていたもの。「私は全然気にしない。あなたは?」と読めるプリントは、その施設の持つ意味にあまりにも相応しくないと当時大いにバッシングを浴びた。
これを受け、ファーストレディのスポークスパーソンを務めるステファニー・グリシャムは、TwitterでMVを紹介するツイートを「#boycottT.I.(T.I.をボイコットしよう)」というタグをつけてRTした。
そして週明けにはCNNで抗議の声明を発表した。
「好き嫌いは置いておいて、彼女はファーストレディであり、ここはホワイトハウスです。政治のために彼女をこのようなやり方で表現するのは、あまりにも無礼でおぞましいと言えます。こういった侮蔑的な攻撃は、食い止めるべきこの国の分断と偏見をさらに深めるだけです」
最初のT.I.のツイートには「Dear 45, I ain’t Kanye(俺はカニエじゃねえから)」とあり、先週ホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領の支持を確約したカニエ・ウェストのことも批判している。
中間選挙を前に、ショウビズ界でも政治的なプロパガンダが横行している。ただ、今回問題となっているビデオは明らかに女性蔑視であり、「#MeeToo」運動に反するもの。T.I.は味方の少ない戦いを強いられることになりそうだ。