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「退院時、軍用ヘリである『マリーンワン』に乗ってホワイトハウスに帰還したトランプ大統領は、自らの足で階段を上り、マスクを外してバルコニーから敬礼していました。これは、トランプ大統領の支持層である退役軍人に向けた“演出”だと私は考えています。彼は支持層に、“私はウイルスに勝った!”とアピールする必要があったのです」

 

そう分析するのは、アメリカ大統領選ウオッチャーで、明治大学教授の海野素央さんだ。新型コロナ感染を受けて、陸軍病院で治療を受けていたトランプ大統領(74・共和党)が10月5日に退院。同日、国民に対し動画を発信した。退院は感染判明・入院からわずか3日後という、“異例の早さ”だったーー。

 

“復活”をアピールする背景には、11月3日に投票日を控える大統領選がある。わずか3日で退院し、ホワイトハウスに姿を見せたトランプ大統領だが、時折肩で息をするようなそぶりを見せ、“完治”とは言い難い様子だった。

 

治療においては、強いステロイド剤とされる「デキサメタゾン」を使用していると報じられている。同薬には精神の高揚や落ち込み、さらに認知障害などの副作用があるとされているが……。

 

「民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、『強いステロイド剤のせいで、大統領の心が侵されているのではないか』という過激な発言をしています。というのも、両者は現在、コロナ危機対策の予算措置について折衡を図っているところですが、トランプ大統領は『民主党との交渉を選挙戦後まで延期する』と一方的に話し合いを打ち切ってしまったのです。トランプ大統領は翌日に発言の一部の撤回をしたものの、『完治していない状況では、経済・外交政策も迷走するままだろう』という不信感は続いています」(在米ジャーナリスト)

 

ホワイトハウス内でコロナに感染したのは、トランプ大統領だけではない。大統領夫人であるメラニアさんや大統領の側近ともいえる人物、ホワイトハウス職員などの感染が続々と確認されている。

 

7日時点で、ホワイトハウスでの交流が感染の原因だと指摘されている感染者は22人に上り、側近たちは離脱を余儀なくされることとなった。

 

「政府内では、『大統領こそ感染拡大の中心人物なのでは?』という声も上がっているほどです」(前出・在米ジャーナリスト)

 

かつて自身が「99%は無害」と豪語していたコロナウイルスにより、窮地に追いやられることとなってしまったトランプ大統領。投票日は目前だが、“活路”はあるのだろうかーー。

 

「劣勢のトランプ大統領は、残り2回のテレビ討論会(15日、22日)で、バイデン氏を論破しなければなりません。バイデン陣営は『感染リスクがあるので、討論会はやるべきではない』と消極的ですが、トランプ大統領はこのチャンスを何としてもものにしたいところでしょう」(海野さん)

 

15日に予定されているテレビ討論会について、主催団体は9日、「両陣営が15日に別々の予定を発表しており、討論会を行えないことは明らかだ」として中止を発表。22日に南部テネシー州で予定している3回目の討論会については、予定通り行われるというが……。

 

「生中継の討論会で、せき込んだり、苦しそうに肩で息をするようなことがあれば致命的。討論会の決行は“諸刃の剣”でもあります。1回目のテレビ討論会は“大舌戦”になってしまったことを踏まえ、22日の討論会は持ち時間を過ぎたらマイクを切る、という措置もありえますから、逆転のチャンスは非常に限られているのです」(海野さん)

 

“誤算”にまみれた再選への計画。トランプ大統領の手に“切り札”は残されているのだろうか。

 

「女性自身」2020年10月27日号 掲載

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