■年俸5300万円、日当66万円の“問題契約”
バッハ氏の手法の特徴は、スポーツ界とビジネス界、それぞれで得た人脈を車の両輪のように駆使して、権力とカネを自らに集めていくところだ。元五輪金メダリストとして国際的な人脈と、弁護士としての法律とビジネスの知識をあわせ持ち、ドイツ語のほか、英語、フランス語、スペイン語の4カ国語を流暢に話すというバッハ氏にしかできない技だ。
ビジネスでの活躍の場を広げるにつれて、IOCでも1991年に委員、1996年に理事、2000年には副会長と、順調に階段を上っていった。2000年にはドイツを代表する巨大企業シーメンスと顧問契約を結んでいる。アラブ諸国での新規ビジネスを進めようとしていた同社が、バッハ氏がIOCで築いた中東人脈に期待したことが理由といわれている。
ドイツ人の父と日本人の母を持つエッセイストのサンドラ・ヘフェリンさんはこう語る。
「年間40万ユーロ(約5,280万円、現在のレート、以下同)という破格の顧問契約料に加え、日当として5,000ユーロ(約66万円)もの報酬を得ていたんです。後にこれが問題になり、2010年に契約を打ち切られています」