住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代から憧れている人の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’80年代”を振り返ってみましょうーー。
「皇室への関心が高い日本人にとって、英国のロイヤルファミリーの動向は気になるもので、’81年にチャールズ皇太子と20歳で結婚したダイアナ元妃は、テレビなどで大きく報じられました」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。
’61年、イギリスの名家・スペンサー伯爵家の令嬢として生まれたダイアナ元妃。’70年代後半に花嫁学校を退学後、ロンドンで一人暮らしをしていたときに出会ったチャールズ皇太子と、愛を深めた。
’82年のウィリアム王子、’84年のヘンリー王子の出産から、ファッションにいたるまで、常に世界の注目を浴び続けた。
「“ハマトラ”“ニュートラ”といったニュートラディショナルなファッションが流行していた日本で、帽子の使い方がエレガントで、フォーマルな装いは、ひときわ、華やかな印象を与えました。とくにダイアナ・フィーバーを巻き起こした’86年の初来日のとき、白地に赤いドットの入った日の丸をモチーフにしたドレスは、多くの日本人を喜ばせました」
人々の心を引きつけたのは、ファッションセンスばかりではない。
’87年にイギリス初のエイズ施設を訪問。まだ感染知識に乏しかった時代に、HIV患者と手を取り合ったように、弱者に対する向き合い方が人々の胸に響いたのだ。
「いまSDGsや人権問題への関心が高まっていますが、それを何年も前に実践しているのです。ときにはハンセン病患者たちと向き合い、ときには地雷撤去活動を支援するため、現地にまで足を運ぶーー。お茶くみとコピーとりに追われ、責任ある仕事が任されにくかった当時の女性たちには、世界を変えるようなダイアナ元妃の慈善活動が、まさに憧れの象徴でした」
一方、チャールズ皇太子とカミラ夫人との不倫によって、ヘンリー王子を出産後は、事実上の別居生活を送り、摂食障害に苦しんだとも伝えられた。
’96年の離婚後も、イギリスの老舗デパート「ハロッズ」の経営者であった億万長者の息子との交際などで話題になった。
「報道は過熱し、’97年、滞在中のパリで、パパラッチに追跡されているなか自動車事故死し、世界が悲しみに包まれました」
ダイアナ元妃の遺志が受け継がれ、死後に立ち上げられた人道支援基金には数千万〜1億ドル以上の寄付が集まったとされ、基金が閉鎖される’12年までに、約500もの慈善団体の支援に充てられた。