■気温が40度近くまで上がる中、飲み水も傷口を縫う糸すらない!
ミャンマーでは、日中の気温が40度近くまで上がる厳しい環境だが、家が壊れたり、余震におびえる人たちは、路上での避難生活を余儀なくされている。そうしたなか、気がかりなのが人々の健康状態だ。
「衛生状態が悪化すれば、感染症のが危惧されます。とにかく安全な水の供給を急ぐ必要がありますが、空港の閉鎖も続いているため、救援物資の遅れが心配です」
吉岡さんのところにも、連日SOSが届く。
「昨日も、首都のネピドーにある病院から、『飲み水が足りない、医師も足りない。点滴も、傷口を縫う糸すらない』と連絡があり、スタッフが急いで水や医療物資を運びました」
被害の全容も見えていないため、復旧への道のりも不透明だ。
「当面は、医療スタッフと共にドクターカーで各地に出向き、その場で薬の処方やケガの応急処置などを続けるしかありません。
加えて、手術を待っている子供たちがいるので、なんとか手術室だけでも突貫工事で復旧させたいですが、この状況では少なくとも1カ月半はかかるでしょう」
大きな病気を抱える人にとって1カ月半もの手術延期は、命を脅かす事態にもなりかねない……。
■これからの災害死は努力次第で減らせる
ミャンマーで起きた大災害はけっして対岸の火事ではない。日本でも、南海トラフ地震や首都直下型地震など、巨大地震が間近に迫りつつあるのだ。
吉岡さんは、私たち日本人に対し、こんなアドバイスをくれた。
「とくに高齢者や子供は、飲料水が不足すると体力を奪われてしまう。最低1週間分くらいは確保しておくことをおすすめします」
日本も夏は40度を超える。そんななか、支援物資が届くまでの飲料水の備蓄は必要不可欠だ。加えて、調理なしで手軽にエネルギー補給できる携帯食も常備したい。
「米よりも、すぐ口に入れられる甘いクッキーなどを備えておくと、救援物資が届くまでなんとか持ちこたえられます」
最後に吉岡さんは、こう熱い思いを明かしてくれた。
「戦争が起きたとき、戦闘で命を落とす人より、戦争の影響で亡くなる人のほうが圧倒的に多い。それは、自然災害でも同じことです。
私たちは、地震で建物の下敷きになった人を救いに行くことはできませんが、災害の影響で失われる命は今後の努力で減らすことができる。だから、一人ひとりが今できることを精いっぱいするしかないのです」
ジャパンハートのウェブサイトでは、ミャンマーへの緊急募金も受け付けている。
ミャンマー地震の教訓を受け止めながら、できる支援を行おう。
【INFORMATION】
Japan Heartホームページ
https://www.japanheart.org
