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(写真:Warner Bros. Korea)

 

チャン・ドンゴンといえば、韓国で“イケメン俳優の代名詞”として知られている。1992年にデビューしたチャン・グンソクはドラマ「息子と娘」に出演後、様々な作品でメインキャストを務めた。1994年に放送され自身が主演を務めたドラマ「最後の勝負」は、大学バスケのブームのきっかけとなるなど、ブームの主役として人気絶頂期を迎える。

 

その後も「敗者復活戦」「ホリデー・イン・ソウル」「恋風恋歌」などの様々な映画で活躍し、特に1999年に公開された映画「NOWHERE ノーウェアー」では映画界からも高評価が相次いだ。だが、全ての作品で高評価を受けたわけではない。出演する作品が酷評される時代もあった。しかし、チャン・ドンゴン自身が“代表作”に挙げたクァク・キョンテク監督の「友へ チング」(2001年)で華麗に復活を遂げた。

 

そして2004年に公開された主演映画「ブラザーフッド」は約1,174万人の観客を動員し、青龍映画賞の男優主演賞を受賞。さらには「コースト・ガード」「PROMISE 無極」「タイフーン TYPHOON」「グッドモーニングプレジデント」「マイウェイ 12,000キロの真実」「決闘の大地で」などで、韓国だけでなく海外でも活躍し、海外スターらとも共演。2012年に放送されたドラマ「紳士の品格」では、中年の熟練された品格を兼ね備えた俳優としての一面を披露し第2の全盛期を開く。

 

2014年公開の映画「泣く男」に出演後、しばらくの間リフレッシュを兼ねて芸能活動を休んでいたチャン・ドンゴン。先月公開された映画「VIP」に韓国の国家情報院の要員役として出演し、約3年ぶりにスクリーンに帰ってきた。

 

先日ソウル市内のカフェでおこなわれたインタビューでチャン・ドンゴンは第一声に「休むことなく作品に出演し続けても、物足りないと感じるときもあるし、休んでいるときは、作品への準備が出来ていないと思うこともある。出演を決めるのは時期の問題ではないようだ」と述べた。

 

以下、チャン・ドンゴンとの一問一答

 

――今回の映画について、以前よりも自然体で演じているように見えるという意見がある。

 

「そう見られたかったです。実際のところ、これまでの出演作は役柄の感情が暗く重い感じで、感情の起伏が激しかったです。今回もそういうことがありました。『VIP』において唯一、感情のジレンマを持っているのがパク・ジェヒョク(自身が演じる役名)だと思っていました。(キム・ミョンミン演じる)チェ・イドや、(パク・ヒスン演じる)リ・デボム、(イ・ジョンソク演じる)キム・グァンイルは感情が鮮明なキャラクターでした。パク・ジェヒョクは目的意識がはっきりしているキャラクターではありますが、自分の目の前で生じる状況についてリアクションをし、感情を表に出すように演じねばならないと考えました。監督と話を何度も交わし、裏で起こる“どんでん返し”が近づいてくるほど感情を出さないようにしました。仕事の時は諜報員の姿で、事務職のときは公務員の感じが出るようにと願っていました。出演する役者が多い作品なので、自分の役を目立たせる欲望が出がちですが、より冷徹になってその欲を抑えるようにしました」

 

――試写会の時に話していたように、本当に元々のシナリオより面白くなったのか。

 

「(笑)半分冗談で半分本当の話です。元々のシナリオと異なるかたちになったということは、映画全体的に僕が現場にいた時間が少なかったので他のことはよくわからないですが、映画では400メートルリレーを走っているような感じでした。そういう意味では元々のシナリオより面白かったです」

 

――残念な部分を挙げるとすると?

 

「以前、『友へ チング』のときに世間で話題になったのが『ユ・オソンはドンスを殺したのか、殺していないのか』でした。皆は殺していないと思っていたようですが、僕は映画を見れば明らかだと思っていました。そのように映画の内容について推測し分析するのが観客の役目だと思います。『VIP』はとある事件をメインに描く映画で、ストーリー自体にインパクトがあり、強いキャラクターの俳優の感情が強調されます。それが良いのか悪いのかの判断は難しいですが、どの映画を見るか選ぶ際の基準にはなると思います。映画の全体的な完成度には満足しています」

 

――奥さんの女優 コ・ソヨンには同映画出演に際し、相談したことはあるのか。

 

「僕が中国にいるときに映画のシナリオを受け取ったので、直接見せることはできませんでした。正直、僕らはお互いの演技をチェックするのがどこか気まずいです。ソヨンが出てくるドラマをリアルタイムで見るときも、(それぞれ)別々に見ます。妻は部屋で、僕は書斎で見るんですよ(笑)妻にはただ、このような映画があるとだけ説明すると、面白そうだし良いのでは、と言っていました」

 

――これまでは「カッコイイ」と言われた際に“謙遜”を第一にして答えたが、今回の制作発表会では違った。

 

「ウケ狙いでした…。以前は謙遜しながら答えることが多かったのですが、正直それが本当の気持ちでした。どこにおいても同じ質問をされるのですが、同じような受け答えをすることに少し飽きてしまいました。なので、制作報告会の時、ふざけてカッコイイふりをして話してしまったのですが、皆さん、面白がってくれました。僕が僕自身の姿に飽きてしまうことが耐えられなかったのですね。性格のせいでもありますが、重い内容の映画にたくさん出演してきて、(雰囲気が)硬くなっていたと思います。真剣に撮影した映画のイベントで、冗談を言うのは、映画に携わった方々に対して失礼になってしまうのではないか、という臆病な気持ちもこれまであったです。もう芸能活動も25年になるので、僕がどんなことを話しても、誤解が生じる余地が随分減ったのではないかと、自分勝手ですが思うことになりました。なので(制作発表会で)気軽にやっても良いのではと、思いました」

 

――映画「泣く男」以降、うまくいかないことが多かったということですが。

 

「はじめての経験でした。作品の成功に関係なく、マンネリズムに陥ったと診断しました。慣性によって演技をしていると、演じることがつまらなくなり、やる気もなくなっていきました。ついには、他の人が面白いと言ってくれても、映画を見ること自体が嫌いになりました。自己愛が無くなり、自分自身のことに関心が無くなっていた時期でした。理由はよくわかりませんが、そのような苦しい時期は結局、仕事で乗り越えるのが正しい方法だと思うので、映画『7年の夜』を撮影しながら乗り越えて元の自分を取り戻しました。もしかして更年期なのかな?(笑)少し前にパク・ジュンフンさんのラジオに出演した際に、横にモニターがあって、(リスナーからの)コメントを確認することができました。それを見ると、『われらの天国』から『泣く男』まで私が出演してきた25年間の作品のタイトルが上がっていました。感無量だったがその一方では25年間という時間で『友へ チング』と『ブラザーフッド』しか代表作がないので、もっと奮起して頑張らねばと思いました。ただ、僕の作品を覚えてくれている人がいたことで、これまでやってきた人生は間違ってはいなかったという思いもありました」

 

――色々なインタビューでイ・ジョンソクについて大絶賛していた。

 

「撮影を終え、ジョンソクに『とても感謝していて、尊敬している』という連絡がきました。実は、ジョンソクが同映画に出演するということを聴いて、最初はとても驚きました。彼がどのような心境で同映画の出演を決心したのかがわかります。私も『コースト・ガード』に出演する際にキム・ギドク監督のところに訪れました。変わりたい、もっと何かを見つけたいという欲望があった頃でした。ジョンソクも同じ感情だったと思います。弱点、短所、全てをさらけ出して、助けて欲しいという雰囲気を出ていたので、助けてあげたいという気持ちでした。自然と応援してあげたいと思いました。いつの間にか、現場で先輩よりも後輩俳優が多くなったのですが、最近は、スタッフや監督も年下になってしまいました。これまではそれに気づかず、後輩に親切にしてあげることが出来なかったのですが、僕に対して『尊敬している』と言ってくれた後輩俳優を失望させたくないと思いました」

 

――今後、コメディ作に出演する予定はあるか。オファーはあったのか。

 

「そのような話は今まで全然来ていません。唯一、チャン・ジン監督の『グッドモーニング・プレジデント』に出演する機会をいただけましたが、とても楽しかったです。その姿は僕が自分で見ても面白かったです。コメディ作に出演できる機会があれば出演したいと思っています」

 

(記事提供/THE FACT JAPAN)

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