現代韓国の若者と聞いて何を思い浮かべますか? 日本では外交上の軋轢ばかり注目されますが、流行語大賞にも選ばれた『愛の不時着』など韓流ドラマで活躍する俳優たちや、米ビルボードで首位を獲得したBTSなど、華やかな世界での成功者が数多くいる印象も強いのではないでしょうか。
しかし、ごく一部のそうした上澄み以外の、市井の若者たちの実態は「非常にシビア」。2020年9月に『韓国の若者』(中公新書)を上梓した安宿緑氏は、そう喝破します。
安宿緑氏に、若者たちが抱える「生きづらさ」について、日韓の比較を交えて教えてもらいました。
■サムソンは例外中の例外!? 超少ない韓国の大企業
――世界市場で存在感を増す韓国のサムスンに対し、NECや富士通がスマホ事業から撤退するなど、日本企業が世界的競争力をおいて韓国企業に負けていると指摘されるニュースをよく耳にします。韓国の就活事情はどうなっているのでしょうか。
「韓国の大企業比率は0.1%に満たず、OECD加盟国のなかでも最下位圏。また日本で言う中企業の層も非常に薄いため、極めて就職口は少ないです」
――氷河期なんでしょうか。
「構造的な問題ですね。韓国は、大企業比率が最下位圏なのに対し、大卒割合は約7割でOECDのなかでもトップと、ねじれが生まれてしまっています。極めて少ない就職口を、極めて多い大卒者が奪い合う状況です」