「この1年、多くの方が本当に大変な思いをされてきたことと思います。今年が、皆様にとって少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします」
天皇陛下と出演されたビデオメッセージで、雅子さまはコロナ禍の国民を気遣うお言葉を述べられた。映像での新年のお言葉は、皇室史上初の試みとなった。
「昨年はコロナ禍で、国民とふれあう機会は激減。そこで両陛下はオンラインを積極的に活用され、新たなご公務のスタイルを模索されたのです」(皇室担当記者)
11月には日本赤十字医療センター(東京都)と、北海道、福島県、沖縄県の関連病院をオンラインで視察。両陛下はメモを取られながら何度も質問され、院内でも一部のスタッフしか入室できない現場の様子まで映像でご覧になった。雅子さまは「皆様が力を尽くされていることに敬意を表します」と、医療スタッフを励まされた。
「驚いたのは、このご訪問を宮内庁が『オンライン行幸啓』と発表したことです。
『行幸啓』とは本来、両陛下がご一緒に外出されること。オンラインであっても『行幸啓』と認めるということは、それだけ両陛下がオンラインで国民と交流することを重要視されているということでしょう」(前出・皇室担当記者)
大分県豊後大野市の高齢者活動団体「はつらつ清川」にも、両陛下は昨年11月にオンラインでご視察。はつらつ清川の関係者に話を聞いた。
「高齢者のみなさんは初めのうち、緊張を隠せない感じでした。ですが、天皇陛下も雅子さまも優しくお声がけくださり、すぐにみんな打ち解けていました。とくに雅子さまは、豊後大野市の歌『ふるさとおおの』に合わせてメンバーが体操する様子をご覧になって『「ふるさとおおの」の歌はとてもいい歌でした。体操もとても体によさそうで、一緒に試してみたらよかったかしらと思いました』とおっしゃり、会場の雰囲気も明るくなりました」
こういった和やかな雰囲気は、むしろオンラインの利点ではないかと宮内庁関係者が語る。
「通常のご訪問では、宮内庁職員や護衛の警察官、取材のカメラマンなどが同行し、どうしても会場はピリピリした感じになります。しかしオンラインならば、ふだんと変わりなくアットホームな雰囲気で懇談ができます」
オンライン訪問により、ふだん会えない地方の人々にも笑顔を届けることができる――。両陛下もそう実感されたのではないだろうか。
12月には障害者の雇用促進に取り組む長野県の企業・エプソンミズベの工場を視察された両陛下。5人の社員とオンラインのモニターを通じて交流された。