Aさん夫婦に違和感が芽生えた。その後、佳代さんは自分の父親らしき男性と一緒に店に来て、夫婦に封筒を差し出したという。
「それでいきなり『手を引いてくれ』と言うんです。何のことかと思いました。藤沢の実家からの援助の話がうまくいったということでしょうか?でも、こちらは親切で動いただけなのに『手を引け』という言い方は……。封筒に何が入っていたか知りませんが……」
親切をあだで返され、侮辱された思いがして、Aさんは封筒を受け取らず、帰ってもらったという。
「佳代さんとはそれっきりです。旦那さんの話をしながら、佳代さんは涙ひとつ見せなかったと思います。それに、圭くんの前で平気で自殺の話をする。こちらが心配すると『知っているから大丈夫です』と言うのですが……」
Aさんの話を聞く限り、佳代さんの話にはうそやごまかしが多いように思える。著書に『被害者のふりをせずにはいられない人』(青春出版社)などがある精神科医・片田珠美さんは佳代さんをこう分析した。
「400万円は学費に使っていないということですが、学費が必要と言って融通してもらったお金を、ほかの目的で使うほうがタチが悪いと思うのが普通です。ところが、彼女は『悪い』と思わないどころか『返さなくてもいい』と言えてしまう。自分に都合の悪い現実が見えなくなることを精神分析で『暗点化』と呼びますが、暗点化が起こりやすいタイプは、自己正当化の達人になりやすい。佳代さんは自己正当化の達人かもしれません」
小室家に吹く逆風のなか、いまも圭さんを擁護するのは、居酒屋「のん処」店主の五井憲治さん(74)だ。圭さんが高校のころにアルバイトをしたフランス料理店のオーナーシェフだった人である。
「みんな圭くん本人を知らないからね。僕のように知ってる人間は『いいコだよ』って言えるけど。圭くんは、お母さんに尽くしてもらってきたでしょ。だから、恩返しをしたいと、お父さんが亡くなったときから言ってたんだ。『僕がお母さんを守っていくんです』ってね。それ、聞いたときはジーンときて、目が潤みましたよ」