数分おきにすさまじい轟音とともに、驚くほど大きく見える飛行機が頭上を飛んでいく。屋外では会話もままならず、窓を閉めても音が聞こえてくる。昨年3月から運用が開始された羽田新ルート下の住民たちの日常だ。
2019年4月に退位なされ、現在は仙洞仮御所(高輪皇族邸)にお住まいの上皇陛下と、美智子さまもまた同様の状況に置かれている。本誌の公文書開示請求で、新ルートを管轄する国土交通省と宮内庁のやり取りが明らかになった。
■報道まで、両陛下の安全やご生活について協議せず
文書によると、新ルートの高度は高輪皇族邸付近でわずか540mほど。もっとも接近した場合の水平距離は、敷地内から約80m、両陛下がお住まいの建物から約160mという近さになるという。
驚くべきは、国交省と宮内庁がやりとりを行った時期だ。国交省が首都圏上空を飛ぶ新ルート案を示したのは2014年6月。退位後の上皇陛下の仮住まいにルート下の高輪皇族邸が内定したのは2017年11月だ。
だが、皇室財産を管理する宮内庁の「管理部」が作成した文書(写真参照)によると、国交省の担当者が宮内庁を訪問して説明を行ったのは2018年1月16日。きっかけは月刊誌『選択』の2018年1月号に「天皇退位後の仮住まいの上空を『羽田新ルート』が通過する危険性」という記事を掲載されたことだった。
つまり、上皇ご夫妻がさらされることになる騒音や落下物の危険性について、記事で問題とされるまで、両省庁は協議を行っていなかったのだ。
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