強い日差しのなか、水色のシャツに長靴姿で水田に入られた天皇陛下。一株一株、丁寧に苗を植えられていく。
天皇陛下は5月18日、恒例のお田植えに臨まれた。秋には実った稲穂を陛下が自ら刈り取られ、収穫された稲は伊勢神宮の神事や宮中祭祀に用いられる。
雅子さまも11日、皇居・紅葉山御養蚕所で、御養蚕始の儀に臨まれた。儀式のあと、蚕を育てる蚕室を見て回った雅子さまは、稚蚕が餌となる桑の葉に張り付いている様子などを確かめられたという。
「ご養蚕は明治以降、歴代皇后が受け継いできました。当初の目的は、生糸が重要な輸出品だった時代、養蚕業を奨励することでした。養蚕業が衰退した平成になっても、美智子さまがご養蚕を続けられたのは、この伝統文化を守っている人々に対する、強い共感と連帯のお気持ちを示すためでした。雅子さまも、そういった心を受け継いでご養蚕に取り組まれています。天皇陛下の稲作とともに、皇室において神事に近いお務めといえます」(皇室担当記者)
実は、雅子さまが今年のご養蚕を始められるのと時を同じくして、愛子さまも御所で13年目となる蚕の飼育をスタートされたという。宮内庁関係者はこう語る。
「愛子さまは学習院初等科3年生のころ、授業で蚕の飼育に取り組まれて以来、ずっとその子孫を飼い続けていらっしゃいます。卵を孵化させて成虫になるまでの全過程、愛子さまが自ら面倒を見ておられます。たとえば適切な時期に孵化させるには、温度管理を慎重にやらなければなりません。また、万が一の病気に備えて、2つのグループに分けて育て、次の世代を増やされているといいます。たいへん手間のかかる作業です。それを12年も続けていらっしゃいますから、驚嘆するばかりです」
愛子さまは初等科6年生のころ、皇室と密接な関係があった藤原道長についての研究レポートを書かれるなど、皇室の歴史にも早くから関心をお持ちだった。
「最初は蚕の幼虫が繭を作り、蛹となり、羽化するというプロセスに、生命の神秘を感じられたのかもしれません。ただ、12年も続けられている理由は、やはり歴代の皇后の仕事として受け継がれてきた歴史の重みに触れられたからだと思います。自主的に“神事”に取り組まれることで、皇室の一員としての自覚を強められたのでしょう」(前出・宮内庁関係者)