■両陛下に贈られた曲の名は『ロマンス』
天皇ご一家にとって、この31年間はけっして平坦な道のりであったわけではない。雅子さまは’03年から長期療養に入られ、愛子さまは初等科2年生のころ、登校への不安を訴えられた。
だが、そうした苦難を打開できたのも“音楽の力”のおかげだったのだ。
「愛子さまがご登校に前向きになられたのは、4年生進級後に管弦楽部に入部され、チェロを演奏されるようになってからです。“乱暴な男子”に怯えられていた愛子さまにとって、音楽の仲間たちは安心できる存在でした。朝練にも積極的に参加されるようになられたのです」(前出・皇室担当記者)
雅子さまが回復されていったのも、天皇陛下のご尽力あってのことだった。ある宮内庁関係者によれば、
「雅子さまが朝に起きることがなかなかおできにならなかったときは、陛下は朝食を召し上がらず、ずっとお待ちになっていました。
また音楽に親しむ時間を持たれていたことも、ご回復に寄与していると思います。日々、陛下や愛子さまの練習をお聴きになっていたのです。
雅子さまは人前では演奏されませんが、お誕生日やご結婚記念日などの節目の日には、陛下のビオラ、愛子さまのチェロに、ご自身もピアノで参加され、御所でお三方だけで演奏されることもあると聞いています」
音楽の効果について精神科医の香山リカさんはこう語る。
「音楽を聴くとリラックスしますし、自律神経も安定するといわれています。また言葉が足りなかったり、間違えていたりで、すれ違いが生じてしまうことは、家族や親しい者同士でもよくあることだと思います。しかし同じ曲を聴くことで心が通い合ったり、いっしょに演奏する時間を持つことで、協力し合うことができるようになることもあります。天皇陛下と雅子さまにも、そんな機会が幾度もあったのではないでしょうか」
両陛下の知人によれば、お二人がアイコンタクトだけで意思を疎通されていて驚いたことがあるというが、それも音楽の時間をともにされることにより培われたものだろうか。
天皇ご一家がどのような曲を演奏されているのかはつまびらかにされていない。だが、前出の宮内庁関係者はこう語る。
「陛下にビオラを40年以上指導しているビオラ奏者・兎束俊之さんは、ご成婚当時にビオラとピアノの二重奏曲である『ロマンス』という曲を贈られています。それを三重奏にアレンジしたものかもしれませんね」
御所でのハーモニーにより温かさを増している天皇ご一家の笑顔。そのほほ笑みの三重奏は、多くの国民をも癒している。