■戦火が広がる世界で共鳴した「夢」
読谷村遺族会元会長の照屋勝男さんは、同い年の新垣さんとともに戦争体験を語り継いできた。
「私たちの年代では、必ずしも戦争の記憶はハッキリしているわけではありません。ただ、食べ物が乏しくて、周りに遺体がたくさんあったのが気にならないほど、とにかくおなかがすいていたことは、幼いながらよく覚えています。
私も生雄も、父をフィリピンで亡くしています。私たちの願いは、二度と戦争を起こしてはいけないということに尽きます。
生雄とは遺族会の活動で、慰霊祭などのほか、集団自決のあったチビチリガマなどの戦跡を歩き、自分の目で確かめたことを子どもたちに伝える平和学習を一緒にやってきました。生雄はいろんな行事の準備を頑張っていたので、とても残念です。戦争を知る世代は少なくなっているので、私も頑張っていかないと……」
今春に読谷村遺族会の会長になった仲本賢一さんは、天皇ご一家とのご懇談で新垣さんが伝えた内容について、次のように振り返ってくれた。
「いつも遺族会の役員会では、ウクライナや、パレスチナのガザ地区で起こっている現代の戦争について話し合ってきました。こうした経緯があったので、新垣さんは遺族会の総意として、ご懇談では沖縄戦のことだけではなく、全世界の平和について話したのでしょう」
大阪・関西万博のシンガポール館のご視察時には、自身の夢を書き込むモニターに「世界平和」と綴られていた愛子さま。新垣さんから託された“メッセージ”に、ご決意を新たに計画されていることがあるという。前出の宮内庁関係者はこう話す。
「両陛下は9月に国民文化祭へのご臨席のため長崎を訪問されます。これは、終戦から80年に際した慰霊や戦争の記憶を次世代に受け継ぐ“旅”の一環でもあります。
じつは愛子さまも、訪問したことのない被爆地・長崎への同行を切望されているというのです。
たしかに公的な行事に両陛下がお子さまを伴われることはありません。ただ今年は事情が異なります。戦後生まれの両陛下は、慰霊に加えて、“戦争の悲惨さや平和の尊さを未来へ伝える”部分にも力点を置かれていることは、愛子さまを伴われた沖縄ご訪問に顕著に表れていると言えます。
両陛下は、愛子さまと戦跡を訪れ、戦争の体験者や語り部などとの交流を重ねることで、国民全体に戦争の歴史と体験を伝えようとお考えなのです。こうしたことからも沖縄と同じく、ご一家でのご慰霊が実現する可能性が高いと思っています」
ウクライナとロシアの戦争、ガザ地区に侵攻したイスラエルによるイランへの攻撃……終息はおろか広がり続ける各地の戦火。新垣さんと同じ「世界平和」という夢の実現に向け、愛子さまは新たな一歩を力強く踏み出された。
画像ページ >【写真あり】天皇ご一家とのご懇談翌日に急逝した、新垣生雄さん(他17枚)
