■野球選手妻の“あるある”…「夏場は食が細る」
亀井さんもアスリートフードマイスターの資格を取るなど、現役時代の林さんを支えた。
「栄養士の先生の付き合いのある病院で、よく夫の血液を検査してもらっていました。食生活を変えると、みるみる数値が良くなっていくのを見てきました。食事の効果というのは、見えないものだけどすごく大事なんだと思うようになりました。
夫が現役だったころは、遠征先で焼き肉をたくさん食べるというイメージ通り、“とにかくたくさん食べろ”という時代で。でも主人には、夏場に疲れ果てて、食事がのどを通らなくなることもしばしばありました。
野球選手の妻が集まって話をしたときに、夏場に食が細るのはうちの主人だけではなく、よく『どうしよう?』という話題になりましたね。それでも、身体のケアのために栄養は摂らなくてはならないので……。ウチの場合は、たんぱく質が取れるようなドリンクを作ったりしましたね。
ただ、いい食事をして栄養をいっぱい摂ったからといって、プロ野球の世界ではいい成績が残せるわけではありません。でも、悔いは残らない。食事やトレーニングもベストを尽くしたと思えたから、主人は引退して、野球の世界と離れた分野でも、気持ちを新たにして仕事ができているのだと思います。
やっぱり子供も同じで、少しでも将来の可能性を伸ばせるようにすることが、親としての責任だと思います。競技の技術を教えるというより、身体づくり、健康な体を作る手助けが大切なことだと感じています」
そう思う亀井さんにとって、コロナ禍で“ステイホーム”を余儀なくされたことは、悪いことばかりではなかったという。
「コロナ禍になるまでは、仕事をしていると、子供と過ごす時間はさほど長くなかったと思います。でもいまは、子供たちや私が家にいる時間も長くなったので、これまでよりも子供と向き合う時間が増えました。
息子は小学5年生、娘は中学1年生ですが、成長期のこの時間は、今しかない。成長にとって大事な時間なのに、外で運動させてあげられない、日光を浴びさせてあげることができないーー。そんなことを考えていたとき、ふとお菓子作りをしよう、栄養価の高いお菓子を作ろうと思い立ったんです。
たとえばシフォンケーキなら、卵7個分くらい使うし、ゼリーならゼラチンを使うから、どちらもたんぱく質が多く取れるからいいな……という具合です。
ただてさえ息子は食べることに興味が薄い子なので、ちょっとでも“おうちごはん”が楽しいとか、美味しいと思ってほしくて。もともと料理はしますが、コロナ禍で一気に幅が広がった気がします」
亀井さんは、味噌まで自作するようになったという。
「お味噌づくりは、作る人によって味が変わるというくらい、奥が深いんですよ。その味噌ができる過程を見ることなんて、これまで仕事に追われていた生活ではなかったことです。熟成されて出来上がった時の感動はすごいものでしたよ。
大豆を潰すところから子供たちとやったんですが、食卓の会話になったこともいいことでしたね。『一緒に混ぜたあの味噌だよ』と言って、大喜びしてくれたり。ちょっとした手間をかけることって、こんなに楽しくて幸せな気持ちになるんだと気づけたことは、コロナで閉じこもりがちな生活のなかでもよかったことのひとつでしょうね。
最近、『こうやって子供たちと食卓を囲めるのは、あと何回あるんだろう』とふと思ったんです。子育てにかける時間は、意外と“あっという間”に過ぎてしまう。人生のなかで、さほど長くはないのかもしれません。だからこそ、手間をかけられるのは今だけだと考えるようになりました」