食の変化、スマホ、ストレス……日常生活の変化により、若者ががんのリスクにさらされている。リスクを少しでも減らすために知っておきたいこと――。
「11人に1人が乳がんになる時代で、患者数はこの30年で3倍以上に増加。それにともない、若い女性の乳がんの患者さんも増えています。実際、私のクリニックでも、20~30代の働く女性の患者さんが急増しています」
そう話すのは「新宿ブレストセンター クサマクリニック」の日馬幹弘院長。若年性乳がんが増えた背景を解説してくれた。
「乳がんの原因は、妊娠に必要な女性ホルモン『エストロゲン』の過剰分泌です。現代の女性は昔と比べて、小学校高学年からと初潮が早くなっていて、月経期間が長いのです。月経前は女性ホルモンが多く分泌され、乳腺が『エストロゲン』にさらされます。妊娠・出産することで、一時的に『エストロゲン』の分泌は止まりますが、少子化の時代、若い女性の出産回数の減少も乳がんの増加に関係しているのです」
気がかりなのが、乳がんだけにとどまらず、子宮頸がんなど、若い女性にがんが増えていることだ。国立がん研究センターによる、がん患者数の統計がある。それによると、’86年から’13年までの間に、20歳から34歳までの年代で、がん患者数は1.4倍になっているのだ。
若年性がんの増加について、外科医として4,000例以上のがん手術を行ってきた「西台クリニック」院長の済陽高穂先生がこう語る。
「がんは特別な病気と思われがちですが、実は若い人でもがん細胞は毎日できています。しかし、がんにならないのは免疫システムががん細胞を日々排除してくれるからです。ところが、若い人のなかには“免疫力”が低下している人が少なくない。その原因の1つがスマホ依存です」
がんとスマホ――。どんな関係があるのだろうか?
「がん細胞の排除に貢献するのが白血球の『リンパ球』です。この『リンパ球』は、自律神経の1つで心身を休ませる副交感神経の働きが高くなると、数が増加します。ところが、夜になってもブルーライトの強い光を発するスマホを使い続けることで、体は昼だと思い込み、体内時計が狂ってしまいます。その結果、副交感神経の働きも低下します」
SNSやメールには、ストレスになるものも多い。スマホを手放せないことで、つねに副交感神経の働きが低下してしまうのだ。“スマホ依存”には、ほかにも若年性がんを誘発する原因がある。
「ベッドでスマホを使うと、睡眠不足になります。そうすると“睡眠ホルモン”といわれる、抗酸化作用が高く、抗がん効果が期待できる『メラトニン』の分泌量も激減するのです」
若年性がんの増加にはライフスタイルの変化も大きく影響している。とりわけ乳がんの増加に関しては、食生活も深く関わりがあるようだ。
「乳がんの発症には遺伝的な要因もありますが、食事も関係します。乳がんの患者さんには、パンや乳製品、甘いものが好きな人が多いのです」
そう話すのは『パンと牛乳は今すぐやめなさい!』(マキノ出版)の著者で「葉子クリニック」の内山葉子先生。
「日本で市販されている“モチモチ”のパンは、品種改良された小麦を使っていて、腸などにダメージを与える『グルテン』を多く含みます。そのうえ、砂糖や欧米では使用が規制されている『トランス脂肪酸』が多いショートニングやマーガリンなどの添加物が使われています。そんなパンは消化しきれない“未消化物”を増やし、グルテン自体が免疫をつかさどる腸で、炎症を起こりやすくします。免疫力も下がってしまうのです」
また健康にいいと思っていた牛乳にも問題があるという。
「牛乳には本来、牛の赤ちゃんが体重を1日1キロ増やすために必要な、成長ホルモンの『IGF-1』が含まれています。この成長ホルモンと乳がんとの関連が多くの論文で報告されています。さらに、現在、多くの乳牛には、がんとの関係が深いとされているホルモン剤や抗生剤などが投与され、その成分が牛乳にも含まれているのです」