「痛すぎてもう受ける気にならない……」「被ばくの心配が……」。乳がん検診の重要性が叫ばれるなか、X線マンモグラフィが抱える問題は多い。しかし、それらを一気に解決してくれる、世紀の大発明が!
「微弱な電波を出す発信機を使い、乳房の表面を軽くなぞるようにスキャンするだけで、乳房の中を立体的に3次元画像で映し出します。従来のX線マンモグラフィでは見えなかったがんも、この検査器を使えば、はっきり見ることができるんです」
こう語るのは、世界初の乳がん画像診断システム「マイクロ波マンモグラフィ」を開発した神戸大学の木村建次郎教授(39)。
乳がん検診でおこなうX線マンモグラフィは、撮影時に乳房を板で挟むため、「信じられないくらい痛かった」という声が多く上がっていた。さらに、X線による被ばくのリスクもあるため、定期的にマンモグラフィ検診を受けたいという女性は減少傾向にある。
厚生労働省は40歳以上の女性を対象に、2年に1回乳がん検診を受けるように呼び掛けているが、’16年に同省が実施した国民生活基礎調査によると、受診率は全国で44.9%と、半分以下にとどまっているのが現状だ。
しかし、木村教授のチームが開発した「マイクロ波マンモグラフィ」は、乳房表面をなぞるだけなので、検診による痛みはない。さらに、乳房に当てる電波は携帯電話の1,000分の1以下、つまり被ばくの心配もないという。革新的な技術なのだ。
「乳房は、乳腺と脂肪、そして乳房を支える靱帯で構成されています。乳腺と靱帯が多く密集している『高濃度乳房』の場合、X線を遮断してしまうため、がんを見つけることが困難とされていました。その『高濃度乳房』を貫通することができるのがこのマイクロ波。がん組織に当たった瞬間跳ね返されるので、数秒でがん組織を立体画像で映し出すことができます」
マイクロ波マンモグラフィで特筆すべきは、そのがん検出の精度。木村教授は、本誌記者に、従来のX線マンモグラフィとマイクロ波マンモグラフィでの撮影結果を見せてくれた。どちらも、「高濃度」とされている同じ人物の乳房を撮影したものだ。
X線で撮影すると、乳房全体が白く写ってしまう。がん組織も同じように白く写るため、“雪山で白うさぎを探すがごとく”と言われるほど、高濃度乳房の人のがんは見落とされやすかった。しかも、日本人女性の約4割が高濃度乳房に当てはまるとされている。
しかし、マイクロ波で撮影したものは、がん組織が黒い影としてハッキリ写っているのがわかる。
「反射して散らばったマイクロ波から、物体の形を導く計算式を世界で初めて解明しました。そしてその数学的理論と、高い周波数のマイクロ波を発生させて観測する高度な半導体技術を合わせて完成したのが、この検査機器なのです。これまでに、神戸大病院などの4つの医療機関で、『高濃度乳房』のがん患者や健康な人ら約250人を対象に臨床研究を重ねました。その結果、年齢、乳房のタイプに関係なく、高い確率で乳がんを検出できることがすでに実証されています」