肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ、自覚症状が出たときにはすでに手遅れというケースが多い…… 画像を見る

「脂肪肝」という言葉は知っていても、人ごとと思っていないだろうか。実は、アルコールによらないことも多く、やせ型の女性でも安心できない。肝臓がんにもつながりうる「脂肪肝」の危険性とはーー。

 

「肝臓がどこにあるか、わかりますか?」

 

そう問いかけるのは肝臓外科医の尾形哲先生だ。

 

肝臓は腹部の右上、胃の隣にあり、体重の約2%で1~1.5キロある人体最大の臓器。働きは、栄養を体の各器官が必要とする形に変える「代謝」、エネルギーの『貯蔵』、アルコールなど有害物質の『解毒』、脂質の吸収を助ける消化液『胆汁生成』など多岐にわたる。

 

「人工心臓はあっても、実用化できる人工肝臓はありません。代えのきかない肝臓ですが、今、日本人の成人の3人に1人が非アルコール性の『脂肪肝』という病気にかかっています」(尾形先生・以下同)

 

脂肪肝は肝細胞の中に脂肪がたまり、自覚症状のないまま、徐々に肝臓の機能を失う病いだという。

 

「非アルコール性脂肪肝患者の1~2割の方は、すでに『NASH(ナッシュ)』という脂肪肝炎になっています。NASHは、放置すれば5年間で2割の方が肝硬変に進行する大変怖い病気です」
肝硬変は黄疸が出る、腹水がたまるなどの症状があり、それ自体が死に至る病いだが、さらに肝がんに進行する人もいるそう。

 

だが、肝炎はお酒が原因では?

 

「以前、肝炎といえばC型肝炎などのウイルス性と、アルコール性が大多数でした。ですがウイルス性肝炎は、8~12週で95%のウイルスが除去できる経口薬が開発され、撲滅が近い病気です。反対に、アルコールをほとんど飲まない人の脂肪肝炎が急増しています」

 

■糖尿病の人、やせ型の人も隠れ脂肪肝の恐れあり

 

肝臓が怖いのは、肝硬変の末期まで自覚症状がないことだ。

 

「肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ、自覚症状が出たときにはすでに手遅れというケースが多いです」

 

怖い脂肪肝だが、どんな人が注意すればいいのだろう。

 

「まずは糖尿病の方です。脂肪肝からNASH、肝硬変へと進行しやすく、50~70代の糖尿病患者は脂肪肝であることが多い。ですが、糖尿病の治療中でも肝臓の検査をしていないことがあります」

 

脂肪肝の検査とは?

 

「超音波やCTなどの画像検査や、肝臓の硬さを測る検査があります」

 

一般の血液検査でも、肝臓の酵素を示すASTとALTのどちらかが30U/L以上だと肝炎の可能性があり、どちらも30U/L以下でもALTの値がASTより高ければ脂肪肝の可能性が高いという。

 

「血液検査はあくまで目安ですが、該当する方、不安な方は肝臓専門医の診察を受けてください」

 

脂肪肝になりやすい年齢は?

 

「特に女性は、40代以降女性ホルモンの減少とともに脂肪肝が増えます。50代の肥満女性の約8割は脂肪肝というデータもあります」

 

読者世代で肥満体形なら検査を検討したい。ただ、脂肪肝の約2割はやせ型の人で起こる。標準体形でも安心はできない。

 

脂肪肝の治療法は?

 

「肝臓は、肝硬変の末期になると元に戻せませんが、脂肪肝やNASH、肝硬変の初期までなら、やせることで改善できます」

 

NASHの患者でも、体重の7%の減量で脂肪肝が改善し、10%やせるとより危険な状態の肝臓の線維化も改善するという。

 

「肝臓脂肪は、内臓脂肪や皮下脂肪より落としやすいことが特徴です。ダイエットをすると、真っ先に肝臓脂肪から落ちるのです」

 

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