「満員電車にギュウギュウ詰め状態で乗ったら、すこししてツーンと鼻につく臭いが強烈にきちゃって……。朝から仕事行く気がうせました」(50代会社員)
「これが加齢臭? っていうような主人の刺激臭。じつは私も臭っているのかなと思うと、すごく不安です」(50代主婦)
薄着でも汗が止まらない猛暑のなか、“汗クサ”は誰にも共通する悩みなのでは?
だが実際、ツーンとする臭いは“汗クサ”以外に原因があるというから驚きだ。
「じつはこれ、『疲労臭』と呼ばれる臭いで、汗の臭いとは、まったく別物なんです」
こう話すのは、東海大学理学部化学科の関根嘉香教授。さっそく疲労臭について聞いた。
「夏場は特に気になる体の臭いの原因は、皮膚の表面から出る皮膚ガスによるものです。これがいろいろな要因によって、臭いの種類や量が変わります」
夏場は、もっとも臭うのが「汗の臭い」だという。
「汗は本来、無臭に近いものです。しかし汗をかいたまま放置すると、汗中の成分や汗に溶け込んだ皮脂や垢などを、皮膚表面にある常在菌が食べることで分解物が出て、それが臭いとなるのです」
ただ、汗の臭いは皮膚表面から臭うものなので、「体を拭いたり、シャワーや入浴で洗い流せば落とせます」と関根先生。
ところが疲労臭はというと「拭いたり洗っても十分に落とせない」というから、やっかいだ。
「じつは、暑くなると、『暑い』というストレスが原因で、体からアンモニアが出てきます。このツーンとくるアンモニアの臭いを疲労臭といっています。
つまり、体やメンタルの疲労がストレスとなり、そのストレスが疲労臭の原因になります。アンモニアは、血液の中から揮発して出てきてしまうので、体を拭いたり、シャワーなどでは十分に落とせません」
なるほど、汗の臭いは皮膚の表面から出るため、洗ったり拭いたりすれば消せるが、疲労臭は体内の血管から皮膚を通って出てくるため、シャワーなどでは十分に落とせないのだそうだ。