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「日本では知られていませんが、台湾をはじめとした中華圏では、1年365日の吉凶を読み解く『通書便覧』という暦が、いまも吉日選びに使用されています」

 

そう語るのは、台湾や中国の世界的に著名な風水師からも信頼されている、日本における伝統風水研究の第一人者の山道帰一さん。この『通書便覧』とは、どういうものなのだろうか。

 

「一般的には『通書』と呼ばれています。人々の暮らしにかかわる行動や“げん”をかつぐ事柄の吉凶についてが、一日ごとに詳しく書かれた、生活便利情報と百科知識を記した冊子です。台湾だけでも毎年50種類以上が出版され、83%の家庭が『通書』を使っているのです」(山道さん・以下同)

 

日本では、大安・仏滅が載っている『高島暦』などの暦を使い、祝い事の日取りなどを決める人は多い。だが、『通書』はより詳しく、歴史のあるものだと山道さんは言う。

 

「『通書』は明代(14世紀)のころに発達し、すでに民衆の間に広まっていました。そして清朝時代(17世紀)に、いまの形にまとまったのです」

 

風水には、「天・地・人」といって、天の陽気と地の陰気が調和して人の気が生成され、そのエネルギーが、人々の成功と失敗につながるという『三才思想』がある。これに従って、日々の吉凶が導き出される。

 

「木星と逆行する“歳星”という星を起点の一つにして、星と星の関係をみていきます。そこから、いい未来へとつながる吉祥をもたらす特殊な日を選び出す方法が『擇日』です。中華圏の風水師であれば、これができてあたり前といわれます。アメリカのトランプ大統領にも、お抱えの風水顧問がいます。先代はティン・サンさんで、現在は娘のパン・インさんです。’95年からトランプタワーのプロジェクトに関わり、落成式の日取りを決めるときにも、擇日を使っています」

 

ほかにも、’16年にシャープを4,000億円で買収した台湾の企業『鴻海』が擇日を参考にしているという。

 

「両社の取締役会で買収が議決されたのは’16年の3月30日です。でも、調印式が行われたのは4月2日土曜日。鴻海の郭台銘会長が擇日で3日後にずらしたことから、異例の土曜日となったのです」

 

これまで擇日に従って行動してきたという郭会長は、資産1兆円という巨万の富を一代で築いている。

 

「しかし、擇日を使いこなすには伝統的な暦の知識が必要。そこで、一般の人も使えるように『通書』には、擇日で導き出されたその日の行動の吉凶が365日ぶん記載されているのです。人生の一大イベントだけではなく、暮らしに寄り添った身近なことまで事細かに書かれています」

 

『通書』に書かれたスケジュールを参考にして、幸運を手にした人も多いという。

 

「43歳の独身女性が『通書』を参考にして、婚活の登録や面談に吉日を選んだところ、とてもいい条件の伴侶に巡り合い結婚にいたりました。また、宝くじを買う日に吉日を選んで『50万円、高額当せんしました』という人や、『通書』に従って勉強のスケジュールを組んで社内の昇進試験に合格した人もいました」

 

『通書』を参考にして生きることは、よい未来につながっていくと山道さんは言う。

 

「いい日を選び、その日に適した行動をとることは、幸せのタイマーをセットすること。その先の未来において、円満成就するように働きかけることなのです。反対に、何か失敗したときには、『擇日が悪かった』と考えます」

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