信託銀行などの金融機関では、認知症になってもお金の取引ができるサービスが次々と登場している。
【三菱UFJ信託銀行】
〈商品名・つかえて安心〉:200万円以上預けると、認知症になった本人に代わって代理人がスマートフォンのアプリを使いお金を下ろせる。使い込みを防ぐために、事前登録をした別の家族にもアプリで知らせる。
〈商品名・みらいのまもり〉:1,000万円以上預けると「有料老人ホームなどの入居一時金」「1件あたり10万円以上の医療費」についてのみ払い出しができる。現金での払い出しはできない。
【みずほ信託銀行】
〈商品名・認知症サポート信託〉:500万円以上預けると、認知症になったときに介護費などを、直接銀行が支払ってくれたり、立て替え分を本人の口座に振り込んでくれたりする。
【三井住友信託銀行】
〈商品名・安心サポート信託〉:金銭信託型を選び3,000万円以上預けると、老人ホームの入居費用などの支払いを代行してくれる。本人の生活費や孫の教育費用など、用途は柔軟に対応している。
「判断能力が低下したとき、高齢者施設への費用の振り込みをするタイプもあるように、用途が限られているものもあるので、親の目的に合うのかどうか、代理人になる子どもと一緒によく相談してから契約したほうがいいでしょう」
また、認知症に備える保険といえば、認知症と診断されたときに一時金がもらえるタイプと、徘徊中などでのケガなどに対して給付金が支払われるタイプがある。
「認知症になったときに給付金がもらえるタイプは若い人が将来に備えるのであれば保険料が安いのですが、高齢者が加入すると高いことがあります。他人にケガをさせたり、物を壊したりして法的な賠償責任を負った場合などに補償される『個人賠償責任保険』に加入しておくと安心です」
「個人賠償責任保険」はクレジットカードに付帯して、数百円程度で加入できるものもあるが、最近の自治体では、認知症高齢者が事故を起こした場合の賠償金を自治体が肩代わりする救済制度を導入している。
■個人賠償責任保険を導入している主な自治体
〈青森県むつ市〉:「むつ市認知症SOSネットワーク(おかえりネット)」の登録者
〈福島県田村市〉:「高齢者おかえり支援事業」の登録者
〈神奈川県大和市〉:「はいかい高齢者等SOSネットワーク」の登録者
〈東京都中野区〉:在宅で生活している65歳以上など
〈愛知県大府市〉:「おおぶ・あったか見守りネットワーク」の登録者
〈愛知県刈谷市〉:「行方不明高齢者等SOSネットワーク事業」の登録者
〈福岡県久留米市〉:「久留米市高齢者あんしん登録制度」の登録者で、日常生活自立度2a以上など
〈佐賀県吉野ヶ里町〉:「吉野ヶ里町認知症見守り台帳事業」の登録者で、日常生活自立度2a以上など
〈大分県豊後大野市〉:「豊後大野市徘徊高齢者等SOSネットワーク」の登録者で、日常生活自立度2a以上など
こうした制度は全国に広がっているので、親が住む自治体の制度を確認してみよう。