一日の中で睡眠時間を含めて長い時間を過ごすのが「家」。
「住環境をおろそかにしていると、健康を害するどころか、寿命を縮めることにもつながりかねないので、季節ごとにメンテナンスを行うことを勧めています」
そうアドバイスするのは、秋田県立大学の長谷川兼一教授。長谷川教授は、全国の戸建て住宅の環境状態を調査して「健康に暮らす住まい」を提唱している。5年、10年と健康寿命を延ばすために、住環境をどのように改善すればよいか長谷川教授に聞いた。
「これから夏場にかけては湿度が上がるので、カビとダニに注意しなければなりません。特にカビの胞子は主に呼吸器に影響し、カビを食べて生息するダニはアレルギーを引き起こす恐れがあります」
免疫力が低下した高齢者がカビを吸い込むと、過敏性肺炎や肺真菌症などの呼吸器系疾患を発症する危険性がある。厚労省の発表では70歳以上の死因4位が肺炎というデータも。では、長生きのためにできる自宅の湿気対策とは?
「湿度を40〜70%に保つことが目安です。梅雨は『換気』必須で、空気がよどむと湿気がたまりカビが生えやすくなるので、風通しをよくしましょう。最近、節電のために家の『24時間換気システム』のスイッチを切り、窓を開けて換気するご家庭も多いですが、特に浴室では換気扇を回しておくほうが湿気には有効です」(長谷川教授、以下同)
布団やカーペットなどの敷物の裏もカビとダニの発生源だそう。
「押入れに『すのこ』を敷いたり、乾燥剤を置くなどして布団は湿気を避けて収納しましょう。フローリングは頻繁に拭き掃除し、畳の部屋も掃除機をかけてください。カーペットの敷きっぱなしはNGです。梅雨前には通気性のいいゴザを敷いて、裏側もこまめに掃除しましょう」
部屋の温度も病気のリスクを下げる重要な要素だという。
「夏の最適室温は26~28度ですが、集合住宅などではベランダから照り返す熱がリビングに入って、エアコンの効果がなくなり、熱中症になる危険があります」
家の壁に高性能の断熱材を施せば、冬は暖かく夏は涼しくなるが、大規模な改修ができない場合は、ホームセンターや100均などのグッズでも対応できるという。
「よしずやすだれで窓からの日射を遮る、エアコンの冷気を逃がさない二重窓にする、といった対策を。今は安価なキットも売っているので、簡単に取り付けられますよ」
部屋の中の「色」も心理に大きく影響するという。
「真っ白い壁は汚れが気になってストレスにつながります。壁はアイボリー、家具やカーテンは木目調や緑を選ぶのがおすすめです。また、夜に明るい白色系の照明をつけると、体内時計に影響して、質のいい睡眠が取れなくなるだけでなく心拍数も上げてしまうといわれています。昼は白色系、夜は暖色系といったように、照明の色を使い分けましょう。寝具はリラックス効果のある青系統の色にすると、深い睡眠につながります」
家の中で思わぬケガをすることも。家庭内での死亡事故者数は年間約1万3千人で、そのうち約2割は転倒・転落・墜落が原因だ。
「夜起きてトイレへ行く中高年も多いですが、転倒防止のため、廊下などにフットライトや人感センサーライトを設置し、不要な段差は解消しておくと安心できます」
大型連休は、プチ改修をする絶好のチャンス。快適な環境を整え、自分と家族の健康を守ろう。