ペットも人間同様、病室の中では緊張して血圧も計測しにくいという 画像を見る

上野動物園のジャイアントパンダ、リーリー(オス19歳)とシンシン(メス19歳)が9月29日に中国に返還されることが決まった。「2023年に日本を去ったシャンシャンに続き、また……」と嘆く声が聞こえそうだが、返還の理由は「高血圧の治療」だという。

 

パンダの年齢は、その3倍が人間の年齢に当てはまるというから、リーリーとシンシンは57歳。中高年の悲哀を感じるが、現在は投薬治療により健康状態が維持できているようだ。東京都と中国野生動物保護協会が協議して、中国への長旅に耐えられる体力があるうちに、生まれ故郷に帰り治療を受けるのが望ましいと判断したそう。

 

「高血圧に悩むのは犬や猫などのペットも同様です。ペットにとって、高血圧はとても怖い病気です」

 

そう話すのは、めのうアニマルクリニックの院長、後藤マチ子先生。

 

ペットの高血圧は、もともと腎臓病や心臓病などの基礎疾患があり、二次的に起こるものだという。ほかにも代謝性疾患やホルモン性疾患が原因になることもある。

 

特に、犬は副腎皮質機能亢進症、猫は甲状腺機能亢進症などの持病があると、高血圧になることが多い。これらの病気は高齢のペットによく見られるという。

 

そもそも、ペットの血圧はどうやって測るのだろうか。

 

「血圧測定の仕組みは人間と同じです。ペットは前足だけでなく、しっぽでも測定できるのが人間との違い。カフと呼ばれる血圧測定用のバンドを巻いて、ペット用の血圧計で測ります」(後藤先生、以下同)

 

ただペットの血圧測定は、簡単ではないという。

 

「人間でも『白衣高血圧』など医師の前では緊張して高血圧になりがちなことが知られていますが、ペットはより顕著です。病院にいること自体がストレスですから、安静時の血圧を測るのは至難です。病院内の静かな部屋で10分ほど休憩して、ペットが落ち着いてから計測開始。そのうえ、10回くらい計測して、平均値をとります」

 

ペットが高血圧だとわかったら、治療が始まるが……。

 

「投薬で血圧をコントロールします。薬は飲みやすい味付きなど種類が豊富なので、ペットが受け入れやすいのが特徴です」

 

ペットの高血圧は、どんな症状が出るのだろうか。

 

「目に症状が出ることがあります。高血圧による網膜症で網膜の血管が破綻し、ひどい場合は失明することもあります」

 

また、高血圧は心臓にも悪影響を及ぼすという。

 

「血圧が高くなると、心臓から肺や全身に血液が送りにくくなります。やがて肺やお腹に水がたまった状態になり、ペットはおぼれたような感覚になりかなり苦しみます。

 

また、心疾患による高血圧は突然死に至ることもあります」

 

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