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(写真・神奈川新聞社)

 

富士山を望める名所として知られる横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)。近隣地で今月建設が始まった超高層ビル群が、眺望を妨げることになりそうだ。港と市街地の奥にそびえる勇姿は、客船の乗客や乗組員、市民らを魅了してきただけに、惜しむ声が上がっている。

 

富士山は晴れて空気が澄んだ早朝や夕方に大さん橋の先端から望むことができる。観光船や横浜赤レンガ倉庫の屋根越しに見えることから撮影スポットとして人気が高い。国土交通省関東地方整備局は「関東の富士見百景」に選んだ。

 

超高層ビル群は横浜・みなとみらい21(MM21)と関内の両地区を結ぶ北仲通北地区の再開発計画地で本格的に建設が始まった。中核となる複合ビルは高さ約200メートル、地上58階で、三井不動産レジデンシャル(東京都)と丸紅(同)が事業主体となり2020年2月に完成する予定。高さ296メートル、地上70階建ての横浜ランドマークタワーに迫る大きさだ。

 

市都市整備局の担当者は「大さん橋から見ると、中核ビルは富士山の左側の稜線(りょうせん)を隠すことになる。計画中の別の高層ビル2棟が建設されると頂上も見えなくなる」と説明。通りを挟んで隣接する北仲通南地区で建設が予定される新市庁舎も眺望を妨げるという。

 

地区の誘導指針として市が定めた「北仲通地区まちづくりガイドライン」には、富士山への通景空間を確保することを事業者に求める記載がある。

 

市は「事業者の努力目標として協力を求めるものであり、都市計画として制限するものではない」と説明。建築物を高層にする代わりに、低層部に市民が利用できる空き地を設けたり、商業集客施設を導入するよう促してきただけに、「地域のにぎわいを生み出すことがまちづくりで最も大切だと認識している」と話す。

 

大さん橋に通うファンからは残念がる声が漏れる。「夕方になって浮かび上がるように見える富士山は、一日の疲れが飛ぶほど美しい」と話すのは、12年から撮影してきた桐田敏彦さん(42)。「客船の乗客や乗組員も喜んでいただけに、眺望が失われるのは何と話していいのか言葉が見当たらない」と胸の内を明かした。

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