(写真・神奈川新聞社)
【時代の正体取材班=石橋 学】 ヘイトスピーチ(差別扇動表現)の被害にさらされてきた川崎市で4日、市民参加による人種差別撤廃条例の制定を求める集会が開かれた。「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が結成1周年記念を兼ねて主催。与野党の国会議員、市議、県議が政党・党派を超えて列席し、国と地方行政、議会と市民が連携した「オール川崎」による差別の根絶への道筋が示された。
最初に登壇したのは元自民党参院議員で川崎市日韓親善協会会長の斎藤文夫氏。「多文化共生の時代にヘイトスピーチは日本の恥。市議会には根絶のため条例を作るようお願いしているが、今日の皆さんの姿を市長や関係者に伝え、善処を求めていく」。保守の立場から示された見識と良心に300人近い参加者で埋まった会場は大きな拍手に包まれた。
市内では2013年からヘイトデモが繰り返されてきた。被害当事者の訴えから始まった同ネットワークの反対運動はヘイトスピーチ解消法の成立を後押しし、昨年5月、ヘイトデモ主催者に公園を貸さないという福田紀彦市長の判断につながった。
自民党国際局長の田中和徳氏は「法律ができヘイトスピーチはいけないと明確になった。自治体で条例をつくるなどして解決していくのは私たちの使命。川崎は歴史的に在日コリアンが暮らし、街や歴史をつくってきた地域だと重く考えながら、努力していく」と明言。
市議からも「運動に勇気をもらった。日本初となる差別撤廃条例の制定へ働いていく」(公明・沼沢和明氏)、「多文化共生は川崎市の伝統で、人権平和施策は基本理念。市議会の意志として超党派で取り組む」(民進みらい・織田勝久氏)といった決意表明が相次いだ。
寄せられたメッセージも読み上げられ、自民党川崎市議団からは「ヘイトスピーチ根絶へ、着実に歩みを進めていきたい」との考えが示された。
政党・党派を問わず12人の国会、地方議員からそろって語られた「根絶」の二文字。川崎市は現在、公的施設でのヘイトスピーチを事前規制するガイドラインづくりに着手し、福田市長は条例制定に向け「オール川崎で議論する」と表明している。被害を訴え、対策を求めてきた在日3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(43)はあいさつに立つと「私たちの街を守ってもらおうと『オール川崎』を呼び掛けた闘いが1年たって『オール議会』『オール社会』に広がった。行政も一緒に壇上に立ち、胸を張ってヘイトスピーチ対策を報告する日は遠くないと感じている」と感慨を込めて話した。