(写真・神奈川新聞社)
【時代の正体取材班=田崎 基】防衛省は7日、廃棄したとしていた南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊が活動を記録した「日報」の一部を公表した。首都ジュバで大規模な戦闘が発生した2016年7月の2日分。連日、自衛隊の宿営地近くで銃撃戦が発生し、200メートルほど離れた地点に砲弾が落下するなど緊迫した状況が報告されている。当時政府はこうした状況を把握していたが、国会審議などで公表しなかった。
防衛省が公表したのは「南スーダン派遣施設隊 日々報告」(16年7月11、12日)。1日当たり50ページ余りで、南スーダンの治安状況や政府と反政府勢力の和平合意の進捗(しんちょく)状況、ジュバの戦闘状況や情勢と評価、気象や燃料・食料保有量などが記載されている。
ジュバでは7月8日ごろから戦闘が激しくなり、11日の日報には「宿営地周辺より射撃音を確認」「市内における略奪等も発生」などと記載。政府軍と反政府勢力との武力衝突について「(隊員の)巻き込まれに注意が必要」「宿営地周辺および市街地における射撃による流れ弾に注意が必要」などと、自衛隊が現地の紛争に巻き込まれる恐れを指摘している。
「予想されるシナリオ」ではジュバでの衝突激化によってPKOが停止する可能性も示唆している。
一方、政府は深刻化する現地の情報を把握していたにもかかわらず一切公表していなかった。
日報を巡っては、ジャーナリストの布施祐仁さんが16年9月末に情報公開請求したところ、防衛省は同12月に「廃棄したため不存在」とし非開示決定を下していた。同省統合幕僚監部(東京都新宿区)はこの際、日報を作った南スーダン派遣施設隊と報告先である中央即応集団司令部(座間市)の両組織にしか存否を確認しなかった。
自民党行政改革推進本部長の河野太郎衆院議員(15区)から再調査を求められ、統合幕僚監部内の端末に「電子データとして残っていたのが見つかった」としている。
稲田朋美防衛相は7日の閣議後会見で「情報公開請求に対する対応は不十分だった」とミスを認めた。ただ、「廃棄は法令に基づくもの。隠蔽(いんぺい)や紛失ではない」と釈明した。
統合幕僚監部は16年12月以降、「報告後廃棄」としてきた日報の取り扱いを変更、今後は半年程度保管するとしている。
■ルール作りが急務 情報公開制度に詳しい大川隆司弁護士(かながわ市民オンブズマン代表幹事)の話
日本は「情報公開後進国」ということを象徴している。作成後の公文書については情報公開制度ができ、ある程度担保されてきた。だが、文書の作成過程については法律が全く不十分だ。重要な情報は文書化し、どこで保管し、どこで市民が見られるか。そうしたことが法律で義務化されていれば今回のような場合、担当者の責任を追及できる。ルール作りが急務だ。