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(写真・神奈川新聞)

 

成人の日の8日、着物の販売やレンタル、着付けを手がける業者「はれのひ」(横浜市中区)と契約した新成人らから、「業者と連絡が取れない」「申し込んだ着物が届かない」といった相談が横浜市や県警などに相次いだ。数百人が予約通りに着物を着られない被害に遭ったとみられる。別業者が手配した着物で代用した人もいたが、人生の晴れ舞台でお気に入りの振り袖が着られず、成人式への出席を諦める人も続出した。

 

はれのひのホームページ(HP)などによると、販売やレンタル、持ち込みの着物を成人式当日に式典会場近くで着付けをするサービスを提供している。多くは20万~50万円で契約、着物を事前に受け取っていた人もいたが、当日に着物を受け取る予定の人もいた。

 

着付け会場となっていた同市港北区のホテルによると、昨年12月29日の期限までに会場の利用代金の振り込みがなく、今年1月5日夜に連絡が取れると、はれのひ側は予定通り実施すると回答する一方、「社長と連絡が取れない」と説明。着物搬入を予定していた7日午後10時になっても誰も現れなかった。

 

このホテルでは例年、約200人がはれのひの着付けを利用。8日は約100人が衣装を持ち込んでいたため、ホテルが急きょ別の業者を手配し、着付けをした。残る約100人のうち多くは着物を着られなかったとみられる。

 

横浜市は、被害に遭った新成人が所定時間に間に合わなくても式典に参加できるよう対応した。県警には少なくとも十数件の相談が寄せられた。

 

HPによると、はれのひは2008年に創業。横浜市中区、東京都八王子市、茨城県つくば市、福岡市に計4店舗を構える。桜木町駅前の本部では8日、社員の姿は確認できなかった。近くの商業施設に入る店舗は7日から営業しておらず、八王子の店舗でも同様のトラブルが相次いだ。福岡の店舗では8日、着付け作業を行ったが、スタッフも社長とは連絡が取れないという。

 

東京商工リサーチ横浜支店によると、はれのひは新規出店に注力し、20年までに100店舗展開を目指していた。ただ、少子化や他社参入による競合激化などの厳しい外部環境の中、「短期間での新規出店は、確かな見通しのある事業計画だったか疑わしい」と同支店。「会社、代表者ともに不動産などの資産に乏しく、短期的な事業拡大に資金繰りや内部体制の確立が追いつかなかったのではないか」と指摘する。

 

まるで、悪夢のよう-。新成人にとってかけがえのない一日が暗転、式典会場周辺に怒りと動揺が広がった。着付け会場のホテルは何も知らずに訪れた親子らでパニックに。式への出席を断念したり、別の業者に駆け込んだりする姿が相次いだ。「数年前から楽しみにしていたのに、何で当日…」。思い出を奪われた女性らは、涙で声を詰まらせた。

 

8日早朝。横浜市の成人式会場の横浜アリーナ(港北区)に近いホテルのロビーでは、ホテル従業員が「業者は来ていません。連絡も取れません」などと説明に追われた。式典の3時間ほど前に集まっていた新成人と保護者は20〜30人。騒然となり、ホテル側は別の着付け業者を紹介するなど、事態の収拾に努めた。

 

大学2年の女子学生と母親(50)=緑区=は「価格が手頃だったので申し込んだのだが…」と困惑。急きょホテルが紹介してくれた業者に頼み着付けはできたものの式には間に合わず、友人と合流して記念写真を撮るなどにとどまった。「悪い意味で夢みたいな一日だった。いまだに信じられない」と怒りが収まらない様子だった。

 

別の大学2年の女子学生は留学先のハワイから緑区の実家に帰省。前撮りや着付けなどで約30万円を支払っていたが、「予約した晴れ着が手元にないので、どうすることもできない」と途方に暮れた。結局、別の業者が用意してくれた着物を着て式には間に合ったものの、母親は「どうしてこんな会社を選んでしまったのか。気に入った着物を着せてあげられず、娘に申し訳ない」と肩を落とした。

 

2年前から試着などの準備を重ねてきた神奈川区の女子大学生は、約40万円で振り袖一式を購入。思わぬ事態に「もう式まで時間がない。他で振り袖を探しても満足する物はない」と出席を断念。「成人式はもう二度とないし、振り袖も今日しかなかった。お金が戻ってきても今日という日はもう戻ってこない」と涙で声を詰まらせた。

 

一方、困っている新成人を助けようと救済に手を差し伸べた業者も相次いだ。ホテルの別会場で着付けを行っていた業者は急きょスタッフを増員し、約50人を引き受けた。「同じ業界の人間として情けない。業界に対する不信感が広がってしまうのではないか」と危惧する。都筑区の着物レンタル店もスタッフを呼び出し4人分の着付けに対応した。