(写真・神奈川新聞)
鎌倉市鎌倉山にある日本料理店「●亭(らいてい)」(●は木へんに雷)に、店の庭園で採れた「穂先タケノコ」を使った初夏限定メニューが登場している。穂先タケノコは伸び始めた若い竹の先端部。土中から掘り取る普通のタケノコよりも楽に収穫でき、竹林の荒廃を防ぐ手段にもなる。同店の「穂先タケノコそば」には、旬を味わえ、竹林の保全も兼ねられる穂先タケノコの活用が広がってほしいとの思いも込められている。
同店は山の斜面に5万平方メートルの庭園を持ち、そこに広がる竹林で採るタケノコを使ってきた。穂先タケノコに着目したのは4年ほど前。広報スタッフの岩村もと子さんが、福岡県などで行われている放置竹林対策から学んだという。
タケノコはある程度育っても皮に包まれた部分はまだ柔らかく、個体差はあるものの、2~3メートルの上部30~50センチほどは十分に食べられる。岩村さんは「育ったら駄目という先入観があったが、むしろえぐみが少なく、下ゆでの時間も短く済み、シャキシャキした食感が楽しめます」と話す。
もちろん可食部分は普通のタケノコよりも少ないが、「収穫が段違いに楽なのと、竹林が野放図に広がるのを防ぐための伐採を兼ねられるのがありがたい」と岩村さん。春のタケノコ掘りと初夏の穂先タケノコの収穫という二段構えなら、野放図に伸びる竹の見逃しもない。食用にしない部位が土に還るのも普通の竹より早いという。
岩村さんは「手入れ(伐採)は必要だが、人手の問題もあって後回しにしがちだった。でも食材にすることで、日々の業務として積極的に行えるようになった」と言う。竹は根茎でつながっているため、根元近くで切ると子孫がいなくなったと判断した親竹が、次のタケノコを生やすことも分かった。「もっと収穫したい場所、これ以上竹を増やしたくない場所を、切り方によって調節できるようになった」とも語る。
同店では取り組みの成果を生かし、収穫期である初夏限定のメニューとして穂先タケノコを具に使う「穂先タケノコそば」を2015年から提供している。「タケノコ掘りが難しい高齢者でも、穂先タケノコなら採れる。食材として定着させれば、竹林保全の足がかりになるはず」と岩村さん。注文客には穂先タケノコの紹介チラシを渡し、PRに努めている。