(写真・神奈川新聞)
昨秋から事実上ストップしている大磯町の中学校給食を巡り、給食の在り方や他の自治体の事例を交えて考える学習講演会が20日、大磯町立大磯小学校で行われた。町民ら約70人が参加し、中学校給食の状況などの説明にメモを走らせていた。
町民有志らが今春発足した「大磯町の給食を考える会」(藤原晃代表)主催。藤原代表は「安全安心な給食を求めながら、自治体は予算面に配慮しがち。給食は最優先にされるべき事業で、町民が自信を持ってそう言えるよう学んでもらえたら」と意図を明かす。自治体問題研究所の竹下登志成常務理事を講師に招き「人と地域の学校給食」について講演した。
竹下さんは「子どもの貧困」を挙げ、週末や夏季休業の間に家庭間で大きく広がる“栄養格差”を給食が埋めている現状や、子ども食堂の広がりは社会全体で子育てをしなければ子どもが育たないという危険な状況を示すものだと指摘。その上で、2016年5月に文科省が示したデータでは、公立中学校の完全給食実施率が神奈川県は27・3%の全国最下位で、次点の兵庫県(62・9%)や、全国平均(90・2%)からも大きく離れているとし、「保育所不足や小児医療費と同様、学校給食も切実な問題」と訴えた。
大磯町が模索する給食については「子どもたちは町民の財産という問題意識を持ち、給食をどうすればいいか知恵を集め、他自治体の好例があれば取り入れてメニューを作ってほしい」とアドバイス。成長期に栄養を自ら摂取できるような食教育の必要性に加え、コミュニケーション能力を養う学習の要素を給食が担える点も説明した。
参加者から、町が導入していたデリバリー方式での成功事例を問われると、竹下さんは「デリバリー方式は給食でなく昼食。栄養面やコミュニケーションが確保できるのか分からない」と否定的な立場を取った。
現在、次男が中学校に通学する女性(48)は「子育てや共働き世帯への支援を考えたら(学校敷地内で調理する)自校方式で、親が安心できる給食を提供してほしい」と話していた。