修理依頼を受けた三線を手にする船橋美和子さん=伊江村のよんなー三線工房(写真・琉球新報社)
【伊江】「よんなー三線工房」開店。“ゆっくり”を意味するうちなーぐちの「よんなー」を店名に入れ、笑みを浮かべるのは住民の船橋美和子さん(28)。8月に伊江島で唯一、三線の修理調整や小物などをそろえる三線店を開店した。「芸能の島、伊江でずっと芸能に関わりたい。多くの人に助けてもらっているから島への恩返しになれば」と目を輝かせる。
大阪出身。伊江島在住5年。約6年前に唄三線の魅力に取りつかれて以来、熱が冷めることはない。ある日、壊れたままの三線が家庭に放置されていることを耳にして、「もったいない。宝が眠っている。島内で修理する人がいればいいのに」と奮い立ち、職人への思いを募らせた。
約1年前、思いがけない医師からの宣告。病魔が喉をむしばんだ。「手術をすれば、高音が出なくなるだろう」と告げられた。唄者を目指していただけに思い悩み、不安と闘う日々を送ったが、決断して手術を受けたその時、三線職人への道が脳裏をよぎった。「病気が自分の背中を押してくれた」と振り返る。「私でいいのかな。できるかな。やらないよりやった方がいい」と人生を考え、店を構える決意を固めた。
修理や調整などの技術は、那覇市で三線店を営むパートナーの親戚の比嘉健琉さんの指導を受けた。工房は、廃材やリサイクル物などを使って全て手作り。物置だった部屋を大きな透明ガラスの窓から光が差し込む明るい店に改装した。「気軽に寄ってね。お茶でも飲める三線屋があってもいいかな。将来は皮張りもできる職人になりたい」と夢を広げる。
(中川廣江通信員)
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